登記されない抵当権であつても、当事者間においては、権利実行の要件を備えるかぎり、競売法の規定するところに従い、抵当権の実行による競売手続を有効に行い得るものである。
登記のない抵当権実行による競売手続の効力
民法177条,民法369条1項,競売法22条
判旨
抵当権の登記は第三者に対する対抗要件にすぎないため、当事者間においては登記の有無にかかわらず、実行要件を満たす限り抵当権の実行による競売手続を有効に行うことができる。
問題の所在(論点)
抵当権の実行としての競売手続(民事執行法181条等)において、抵当権設定登記が未了または無効であることは、当該競売手続を無効とする事由になるか。抵当権の登記が対抗要件にすぎないことからくる、実行手続の有効性が問題となる。
規範
抵当権の登記は、その権利を第三者に対抗するための要件(民法177条)にすぎない。したがって、当事者間においては、抵当権の設定が有効であり、かつ債務不履行等の権利実行の要件を備えている限り、登記の欠缺や無効にかかわらず、競売法(現行の民事執行法)の規定に従い抵当権の実行としての競売手続を有効に行うことが可能である。
重要事実
抵当権者が、有効に設定された抵当権に基づき、債務者が弁済期に債務を弁済しなかったため、抵当権の実行として競売の申立てを行った。これに対し、債務者(上告人)側は、当該抵当権設定登記が無効であることを理由に、競売手続の無効を主張して争った。
事件番号: 昭和45(オ)890 / 裁判年月日: 昭和46年2月25日 / 結論: 棄却
抵当権の実行のための競売開始決定が所有者に対して送達されないかしがあつても、競落許可決定が確定すれば、右かしを理由として同決定の無効を主張することは許されない。
あてはめ
本件では、原審の認定によれば抵当権の設定自体は有効に成立しており、かつ弁済期における債務の不履行という実行要件も具備されている。抵当権の登記は対抗要件であって成立要件ではないため、仮に抵当権設定登記が無効であったとしても、それは第三者に対する対抗力の問題にすぎない。よって、抵当権者と抵当権設定者との間の関係において、登記の効力は競売手続の適法性を左右しないといえる。
結論
抵当権設定登記が無効であっても、直ちに本件競売手続が無効になるわけではない。
実務上の射程
抵当権実行(任意競売)において、登記は競売開始決定のための形式的な証明資料(民事執行法181条1項1号)として実務上は重要であるが、実体法上の権利行使の効力としては登記は不要であるという理屈を示す際に用いる。ただし、現在の民事執行法下では、登記がない場合は判決等の債務名義が必要になる点に注意を要する。
事件番号: 昭和33(オ)285 / 裁判年月日: 昭和34年9月22日 / 結論: 棄却
競売手続の無効を原因として現在の法律関係の存否確認を求めることなく単に右競売手続自体の無効確認を求めることは許されない。
事件番号: 昭和45(オ)1154 / 裁判年月日: 昭和46年3月26日 / 結論: 棄却
甲からの手形の割引による金員の借用の申込を諒承した銀行が、甲と銀行との間に従前取引がなかつたため、貸付の便宜上銀行と取引関係のある乙を借主とし、甲を担保提供者として甲所有の土地に根抵当権を設定して右手形の割引をすることとして右土地につき根抵当権を設定した場合において、右根抵当権の債務者を乙、被担保債権を銀行の乙に対する…
事件番号: 昭和35(オ)994 / 裁判年月日: 昭和37年8月30日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】金銭借用証書の形式で作成された書面であっても、実質が他人の債務に対する重畳的債務引受およびその担保のための抵当権設定であれば、当該実態に基づいて権利義務関係を判断すべきである。訴訟手続において、控訴の不適法に関する抗弁が撤回された場合には、裁判所はその適否について判断を要しない。 第1 事案の概要…
事件番号: 昭和34(オ)1280 / 裁判年月日: 昭和36年10月31日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】不動産の二重譲渡において、第一の譲受人は、自らが未だ所有権移転登記を備えていない以上、第二の譲受人に対して所有権の取得を対抗することができない。これは、第二の譲受人の有する登記が有効であるか否かを問わない。 第1 事案の概要:上告人は、本件不動産を譲り受けたと主張しているが、未だその所有権取得の登…