一 裁判上の和解が滞納処分の差押に抵触する場合、右和解調書正本に基づいてなされた所有権取得登記の抹消登記に対し、国は所有権を代位行使して右回復登記を求める権利を有する。 二 債権者が債権者代位の訴を提起した代位権を行使した後は、債務者は代位の目的となつた権利について訴を提起できない。
一 裁判上の和解に基づく抹消登記が滞納処分の差押の効力に抵触し、国の代位によつて回復登記ができるとされた事例 二 債権者代位権行使後に債務者としても訴を提起できるか
国税徴収法(昭和34年改正前)10条,民訴法203条,民法423条,不動産登記法67条
判旨
債権者が債権者代位権(民法423条)を行使して訴えを提起した後は、債務者は代位の目的となった権利について自ら訴えを提起することはできない。
問題の所在(論点)
債権者が代位訴訟を提起した後に、債務者が同一の権利について訴えを提起することができるか(代位訴訟提起後の債務者の訴訟提起の可否)。
規範
債権者が債権者代位権を行使して訴えを提起し、その権利を適切に行使し始めた後は、債務者はその代位の目的となった権利について、自ら訴えを提起する権能を失う。また、滞納処分として差押えを行った国は、徴税権確保のため、納税義務者(債務者)の所有権に基づく妨害排除請求権を代位行使することが認められる。
重要事実
納税義務者Dは、本件建物の登記名義をEから直接取得し、その後、国がDの税金滞納を理由に当該建物を差し押さえた。しかし、Dは差押え後に建物をFに売却し、F名義の登記がなされた。さらに、元々の所有者であったA1が、Fとの和解(Dは不参加)に基づき、D及びFの登記を抹消させた。国は、Dに代位して、A1らに対し抹消登記の回復や不実の登記の抹消を求めた。これに対し、A1らは、D自身も同様の訴えを提起しているから代位権は行使できないと主張した。
事件番号: 昭和35(オ)1470 / 裁判年月日: 昭和38年1月22日 / 結論: 棄却
右登記を無効として抹消を求めることはできない。(昭和三〇年(オ)第六三二号同三三年五月九日第二小法廷判決、民集一二巻九八九頁参照)。
あてはめ
本件では、国がDの所有権を代位して抹消登記の回復等を請求する訴えを提起した後に、債務者Dが同一の目的で訴えを提起したことが認められる。債権者が代位権を行使して訴えを提起した以上、債務者はもはや代位の目的となった権利について訴えを提起することはできないと解すべきである。したがって、Dによる後発の訴えは国の代位権行使を妨げるものではない。また、A1とFとの間の和解は差押えの効力に抵触し、かつDが当事者でない以上、Dの登記を抹消したことは違法であり、国はDの所有権を代位して回復を請求できる。
結論
債権者が代位権を行使して訴えを提起した後は、債務者は同一の権利について訴えを提起できない。したがって、国の代位請求は適法に認められる。
実務上の射程
本判決は、代位訴訟提起による債務者の処分権限制限(民法423条の5の明文化前の法理)を示すものである。現在の民法423条の5では、代位訴訟の提起を債務者が知った後は、債務者は当該権利の取立てその他の処分をすることができないと規定されており、本判決の趣旨は現行法下でも訴訟手続の重複を避ける法理として重要である。
事件番号: 昭和35(オ)469 / 裁判年月日: 昭和37年2月16日 / 結論: 棄却
仮登記後本登記をするまでの間に、仮登記義務者により本登記の目的たる権利と相容れない処分が行われ、これに基づく第三者の権利取得の登記がなされたとしても、右本登記が為された以上、右第三者の権利取得は否認され、その登記の抹消を求めることができる。(同旨、昭和三二年六月七日第二小法廷判決、民集一一巻九三六頁、昭和三二年六月一八…
事件番号: 昭和35(オ)1197 / 裁判年月日: 昭和38年2月22日 / 結論: 棄却
一 甲乙両名が共同相続した不動産につき乙が勝手に単独所有権取得の登記をし、さらに第三取得者丙が乙から移転登記をうけた場合、甲は丙に対し自己の持分を登記なくして対抗できる。 二 右の場合、甲が乙丙に対し請求できるのは、甲の持分についてのみの一部抹消(更正)登記手続であつて、各登記の全部抹消を求めることは許されない。 三 …
事件番号: 昭和31(オ)956 / 裁判年月日: 昭和35年3月24日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】特定の立木を代物弁済として提供する代理権や登記費用の負担特約を締結する権限があるからといって、当然にその土地自体の所有権を移転させる代理権まで認められるものではない。 第1 事案の概要:上告人らは、被上告人の代理人Dとの間で、本件山林の立木を債務の代物弁済として供する旨の合意をし、立木の所有権保存…
事件番号: 昭和39(オ)231 / 裁判年月日: 昭和40年2月23日 / 結論: 棄却
処分禁止の仮処分の登記後に仮処分債務者から第三者に対し所有権の移転登記がされた場合において、仮処分債権者は、債務者との本案訴訟において実体法上の権利の存することを確定しないかぎり、単に仮処分債権者たる地位に基づいて、右第三者に対し、右実体法上の権利を主張して、前記所有権の移転登記の抹消登記を請求することはできない。