判旨
裁判所は、真実発見の要請に基づき、当事者の主張する事実と相容れない事実を認定して当該主張を排斥することができ、これは弁論主義(当事者主義)に反しない。
問題の所在(論点)
裁判所が、当事者の主張していない、あるいは当事者の主張と矛盾する事実を認定して請求の成否を判断することが、弁論主義(主要事実の主張責任)に反するか。
規範
弁論主義の下においても、裁判所は真実発見の要請に基づき、証拠資料に基づき当事者の主張と相容れない事実(反対事実)を認定することができる。これにより当事者の主張を認められないと判断することは、当事者主義に反するものではない。
重要事実
上告人は、原審においてある事実を主張したが、原判決は被上告人が主張していない事実(上告人の主張と矛盾する事実)を認定し、上告人の主張を退けた。これに対し、上告人は、相手方が主張していない事実を認定の基礎とした原判決の措置は弁論主義に違反するものであると主張して上告した。
あてはめ
事実審裁判所は真実発見を目的としており、当事者の主張を排斥するために、証拠等から得られた反対事実を認定することは許容される。本件において、原審が被上告人の明示的な主張の有無にかかわらず、上告人の主張と相容れない事実を認定して判断を下したことは、適正な事実認定の範囲内であり、当事者主義に反する違法はないと評価される。
結論
裁判所が当事者の主張と相容れない事実を認定して主張を退けることは弁論主義に反せず、適法である。したがって、本件上告は棄却される。
実務上の射程
弁論主義の第一テーゼ(主張責任)の限界を示す。裁判所が請求を基礎づける事実を自ら補充することは禁止されるが、相手方の主張を排斥するための「反対事実」の認定(いわゆる間接反論事実の認定等)は、弁論主義の適用外であり、自由心証による真実発見が優先されることを確認した事案として答案で活用できる。
事件番号: 昭和28(オ)533 / 裁判年月日: 昭和31年1月27日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】当事者が明示的に事実を主張していない場合であっても、証拠の申出や弁論の全趣旨から、その事実を主張する意思が認められるのであれば、裁判所は当該事実を認定して判決の基礎とすることができる。 第1 事案の概要:上告人が被上告人に対し請求を行った事案において、被上告人は解除権の留保およびこれに基づく契約解…
事件番号: 昭和30(オ)573 / 裁判年月日: 昭和31年10月4日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】証言の一部に事実に符合しない部分があっても、それだけで直ちに他の部分が信用できなくなるものではなく、証拠の採否は事実審の専権に属する。 第1 事案の概要:上告人は、原審における事実認定に関し、経験則に反する認定があること、および採証の法則に違反して事実認定が行われたことを主張した。具体的には、証言…
事件番号: 昭和33(オ)718 / 裁判年月日: 昭和36年5月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】当事者が主張していない契約条件(代金決済方法等)を認定して売買契約の効力を認めることは、当事者の主張・立証の範囲内であれば弁論主義に反しない。また、特定の買戻し合意や代金決済合意を含む売買契約であっても、直ちに公序良俗に反して無効となるものではない。 第1 事案の概要:被上告人(原告)は上告人(被…
事件番号: 昭和30(オ)648 / 裁判年月日: 昭和32年9月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】表見代理の成立要件である「正当の理由」の有無は、事実認定の問題であり、原審が証拠に基づいてこれを否定した判断は違法ではない。 第1 事案の概要:上告人の代理人Dが、訴外Eに被上告人を代理して本件土地を売却する権限があるものと信じて取引を行った。上告人は、Dがそのように信じたことについて「正当の理由…
事件番号: 昭和31(オ)858 / 裁判年月日: 昭和33年8月28日 / 結論: 破棄差戻
【結論(判旨の要点)】当事者が書証を提出し、かつ本人尋問においてその書証の内容に合致する陳述をした場合には、弁論の全趣旨から判断してその事実を主張したものと解するのが相当である。 第1 事案の概要:被上告人(原告)は、上告人(被告)の父との間で本件宅地30坪の売買契約を締結したと主張した。これに対し上告人は契約の存在を…