家屋賃貸借契約について、解約申入れの意思表示と賃料不払を理由とする解除の意思表示を共に主張することは、なんら法律の禁ずるところではない。
家屋賃貸借契約についての解釈申入の意思表示と解除の意思表示は両立しうるか。
民法90条
判旨
賃貸借契約において、解約申入れの意思表示と賃料不払を理由とする解除の意思表示を併せて行うことは適法であり、解除が有効な場合には解約申入れが失効するにとどまる。また、解約申入れがなされたとしても賃借人の賃料支払義務は消滅せず、催告に応じない不払があれば解除権の行使は有効に認められる。
問題の所在(論点)
解約申入れの意思表示がなされた後に、同一の契約について賃料不払を理由とする解除の意思表示を重ねて行うことができるか。また、解約申入れの存在によって賃借人の賃料支払義務や解除の有効性に影響が生じるか。
規範
同一の賃貸借契約に対し、期間満了等に伴う解約申入れの意思表示と、債務不履行を理由とする解除の意思表示を併存させることは法律上禁止されない。両者は互いに相容れないものではなく、解除の効果が発生した場合には解約申入れが対象を失い失効する関係に立つ。また、解約申入れ後であっても賃借人の賃料支払義務は存続し、その不履行に基づく解除権の行使が信義則に反し権利濫用となるかは、個別具体的な事情に基づき判断される。
重要事実
賃貸人(被上告人)が賃借人(上告人)に対し、まず賃貸借の解約申入れの意思表示を行い、その後、賃料の不払を理由に賃貸借契約の解除の意思表示をした。賃借人は、解約申入れがなされた以上は本来の賃料支払義務を免れる旨、あるいは解除権の行使は信義則に反し権利濫用である旨を主張して争った。また、賃料債務が取立債務であることや、提供しても受領しないことが明らかであった等の事情も主張されたが、原審ではこれらを否定する事実認定がなされていた。
あてはめ
賃貸人が解約申入れと解除の二つの意思表示を共に主張することは法律上制限されず、解除が有効になれば解約申入れが失効するにすぎない。本件では解約申入れがあったからといって、賃借人が本来の賃料支払義務を免れるものではなく、適法な催告があった以上、延滞賃料を支払う義務がある。事実認定によれば、本件賃料債務が取立債務である証拠はなく、持参払いを禁ずる趣旨の催告でもなかった。また、統制家賃額を提供しても受領拒絶されることが明らかであったとの事実も認められない。したがって、解除権の行使が信義則に反し権利濫用となるような特段の事情は認められないと判断される。
結論
解約申入れと賃料不払による解除の意思表示の併存は認められ、賃借人が賃料支払義務を尽くさない以上、当該解除は有効である。上告棄却。
実務上の射程
契約終了を確実にするため、あるいは明渡請求の根拠を複数備えるために、解約申入れと解除を予備的・重畳的に主張する実務上の手法を肯定する。答案上は、先行する解約申入れによって賃料支払義務が消滅しないこと、及び解除要件の検討(催告・不履行)において、解約申入れの存在が直ちに解除権行使を信義則違反に導くものではないことを示す際に活用できる。
事件番号: 昭和31(オ)708 / 裁判年月日: 昭和32年6月11日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】賃貸借契約の解約申入れは要式行為ではなく、契約存続を欲しない意思が客観的に表示されていれば足り、更新拒絶の意思表示に解約申入れの意思が包含されていると解することも妨げられない。また、正当事由の判断において賃借人の困窮等の事情を考慮した上でなお明渡しを認めることが可能であり、正当事由が認められる場合…