妻が住宅兼店舗の建物を所有する目的で賃借権を有する土地の極く一小部分に夫が物置を所有することによつてその敷地部分の占有を妻より委譲され、その敷地部分を占有することは、不法占有とはいえない。
敷地の占有を委譲されて占有することが不法占有とならないとされた事例
民法709条
判旨
借地権者の配偶者が、借地の一部に物置を所有しその敷地を占有することは、借地の目的に反せず、賃貸借上の信頼関係を破壊する背信行為とはいえないため、不法占有には当たらない。
問題の所在(論点)
借地権者の配偶者が、借地の一部に物置を設置してその敷地を占有することが、土地賃貸借契約における背信行為として不法占有(または無断転貸等)に該当するか。
規範
賃借人以外の第三者による土地の占有が不法占有(民法709条等)あるいは無断転貸(民法612条2項)による解除事由となるかは、当該占有が賃貸借契約の目的に反するか、および賃貸借上の信頼関係を破壊する背信行為といえるかによって判断される。
重要事実
土地所有者Dは、被上告人B3との間で、住宅兼店舗の所有を目的とする期間の定めのない土地賃貸借契約を締結した。B3の夫である被上告人B1は、当該借地の極く一小部分に物置(本件家屋)を所有し、妻であるB3から敷地部分の占有を譲り受けて占有を開始した。地主側は、このB1による占有が不法占有であるとして明け渡し等を求めた。
事件番号: 昭和36(オ)1325 / 裁判年月日: 昭和39年2月25日 / 結論: 棄却
土地賃貸借契約解除後賃借人およびその転借人に窮状の起ることをもつて、右解除権の行使を権利濫用ということはできない。
あてはめ
本件において、B1による占有対象は借地の「極く一小部分」にとどまり、その用途も「物置」としての所有である。これは、本来の賃貸借目的である「住宅兼店舗の所有」を阻害するものではなく、借地の目的に反しない。また、B1と賃借人B3は夫婦関係にあり、このような密接な関係にある者が一部を利用することは、賃貸人に対する背信行為とは認められず、信頼関係を破壊するものとはいえない。
結論
B1による占有は不法占有とはいえず、地主による明け渡し請求等は認められない。
実務上の射程
本判決は、民法612条2項の無断転貸解除における「背信行為論」の法理と同様の枠組みを、第三者の不法占有の成否という文脈で認めたものである。家族間での一部利用など、形式的には第三者の占有であっても、賃貸借の目的・態様からみて信頼関係を破壊しない場合には、不法占有とはならないとする主張の根拠として利用できる。
事件番号: 昭和37(オ)1411 / 裁判年月日: 昭和39年9月25日 / 結論: 棄却
(省略)
事件番号: 昭和37(オ)530 / 裁判年月日: 昭和38年4月30日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】1棟の建物を区分して買い受けた複数の者が、各建物部分の敷地を個別に賃借した場合、建物の共有登記や賃料の一括支払がなされていても、賃貸借関係は個別に成立すると解される。 第1 事案の概要:D所有の土地上にあった1棟の2戸建建物のうち、南側部分をB1が、北側部分をB2がそれぞれDから買い受けた。その際…
事件番号: 昭和31(オ)532 / 裁判年月日: 昭和34年4月15日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】建物は敷地を離れて存在し得ないため、建物を占有使用する者は、当然にその建物の敷地も占有するものと解される。 第1 事案の概要:第三者(社団法人D協会)が郵政用地の上に建築資材展示場を建築して占有していた。上告人らは、当該建物の一部を占有使用していた。その後、建物の所有者である当該協会が敷地の使用権…
事件番号: 昭和35(オ)221 / 裁判年月日: 昭和36年3月14日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】借地権者が借地法等の対抗要件を具備していない場合、第三者である新所有者の善意・悪意を問わず、借地権を対抗することはできない。 第1 事案の概要:宅地の所有者が交代し、新所有者が旧所有者から宅地を取得した。これに対し、以前から当該宅地を使用していた借地権者が、自らの借地権を新所有者に対して主張した。…