取引元本極度額の定めのある手形取引約定について根保証をしている場合には、手形貸付額が右極度額を超えるに至つても、右極度額の範囲内で保証の責を負うものと解すべきである。
手形取引約定に基づく手形貸付額が与信限度額を超過した場合と保証人の責任。
民法447条
判旨
取引元本極度額の定めがある根保証において、実際の貸付額が極度額を超過した場合であっても、保証人は極度額の範囲内において全額の保証責任を負う。
問題の所在(論点)
根保証契約において、実際の取引額が約定の取引元本極度額を超過した場合、保証人はその超過分を含めた債務について、極度額の範囲内で保証責任を負うか。
規範
取引元本極度額の定めがある手形取引約定に基づく根保証において、実際の貸付額が当該極度額を超過したとしても、別個の貸付とする特段の留保がない限り、超過分を含めた全額が当該約定に基づく債務に含まれる。この場合、保証人は、実際の債務全額のうち、定められた極度額を限度として保証責任を負う。
重要事実
債務者Dと被上告銀行との間で、取引元本極度額を30万円とする手形取引約定が締結された。上告人は、Dが銀行に対して負担する一切の債務につき、元本極度額30万円の限度で連帯保証する旨の契約を締結した。その後、銀行はDに対し、極度額を超える合計50万円の手形貸付を行った。Dの弁済等を経て残存した債務につき、銀行が上告人に対し保証債務の履行を求めたところ、上告人は、極度額を超えた取引は保証の対象外である旨を主張して争った。
あてはめ
本件では、50万円の手形貸付について、取引元本極度額30万円を超過しているものの、これを約定とは別個の貸付とする旨の特別の留保はなされていない。したがって、超過額を含めた全額が本件約定に基づく債務であるといえる。上告人は、Dが負担する一切の債務について極度額30万円の範囲で保証する旨を約している。そうであれば、実際の貸付額が極度額を超過していても、その全額(50万円)のうち極度額(30万円)に達するまでの範囲において、上告人は当然に保証責任を負うと解される。
結論
保証人は、実際の貸付額が取引元本極度額を超過した場合であっても、約定された保証極度額の範囲内であれば、その全額について支払義務を負う。
実務上の射程
根保証における「極度額」の法的性質が、取引の制限(枠)ではなく、保証人の責任の限度(責任限度額)であることを示した。答案上は、保証人の責任範囲を限定的に解釈しようとする主張を排斥する際の根拠として活用できる。
事件番号: 平成4(オ)2051 / 裁判年月日: 平成6年12月6日 / 結論: 破棄自判
信用組合取引約定により負担する現在及び将来の債務の支払を確保するため根保証契約と根抵当権設定契約が同一の当事者間で同時に締結された場合に、根保証契約の保証の限度額が明示されなかったとしても、根抵当権の極度額が債務の額を具体的に想定した上でその範囲内で抵当不動産の担保価値を把握すれば足りるとして定められたなど判示の事実関…