信用組合取引約定により負担する現在及び将来の債務の支払を確保するため根保証契約と根抵当権設定契約が同一の当事者間で同時に締結された場合に、根保証契約の保証の限度額が明示されなかったとしても、根抵当権の極度額が債務の額を具体的に想定した上でその範囲内で抵当不動産の担保価値を把握すれば足りるとして定められたなど判示の事実関係の下においては、右根保証契約の保証の限度額は右根抵当権の極度額と同額であり、かつ、両者は併せて右同額の範囲内で債務の支払を保証又は担保するものと解すべきである。
根保証契約の保証の限度額が明示されなかった場合に右限度額が同時に設定された根抵当権の極度額と同額であり両者が併せて右同額の範囲内で債務の支払を保証又は担保するものとされた事例
民法446条
判旨
根抵当権設定契約と同時に締結された連帯保証契約において、保証限度額の明示がない場合であっても、契約締結の経緯や根抵当権の極度額設定の趣旨に照らし、客観的には根抵当権の極度額を保証限度額とする合意があったと解するのが相当である。
問題の所在(論点)
保証契約書に保証限度額の明示がない場合、同時に設定された根抵当権の極度額によって保証人の責任範囲が制限されるか。また、極度額相当の配当がなされた場合に保証債務は消滅するか。
規範
包括的な保証債務の範囲は、契約書の文言のみならず、契約締結の動機、目的、経緯、及び同時に設定された他の担保権との関係等を総合考慮して合理的に解釈すべきである。特に、特定の担保物権の設定と同時に保証契約が締結された場合、その担保権の極度額は、債権者が当該取引から回収を想定している限度額を示す重要な指標となり得る。したがって、特段の事情がない限り、保証人の責任限度額も当該極度額の範囲内に制限されると解するのが合理的である。
重要事実
元妻である上告人は、元夫Dの事業資金借入れに際し、Dの依頼により連帯保証人となると同時に、自己所有のマンションに極度額1200万円の根抵当権を設定した。この極度額は、当時の残債務と新規融資額の合計からDの預金相殺見込額を控除した額として算出されていた。その後、Dは追加融資を受けたが倒産。債権者(被上告人)はマンションの競売により極度額1200万円全額の配当を受けたが、なお残存する債務について上告人に連帯保証債務の履行を求めた。保証契約書上、保証期間や限度額の定めは明記されていなかった。
あてはめ
本件根抵当権の極度額1200万円は、Dの想定債務額から預金額を控除した額として合理的に算出されたものであり、債権者が把握すべき担保価値の範囲として定められた。本件保証契約は、この根抵当権設定と同時に、同一の債権回収を確保する目的で締結されたものである。そうである以上、本件保証契約は、物的担保と人的保証のいずれか又は双方から、合計して極度額1200万円の範囲内で債権回収を確保する趣旨と解するのが当事者の合理的意思に合致する。したがって、客観的には1200万円が保証限度額であり、債権者が既に極度額相当の配当を受けた以上、保証債務の引当てとなるべき範囲の回収は完了したといえる。
結論
被上告人が根抵当権の実行により極度額相当の配当を受けたことで、上告人の保証債務は当然に消滅する。被上告人の請求は認められない。
実務上の射程
契約書の文言が包括的であっても、物的担保(根抵当権)と併用された人的保証については、極度額による責任制限の解釈が働きやすいことを示す。答案上は、保証人の責任範囲を限定する際の合理的意思解釈の論拠として、極度額の設定経緯や算出根拠を指摘して用いる。なお、本判決は平成16年民法改正前の事案であるが、現行法下の根保証契約における極度額定めの義務化(465条の2)の趣旨とも整合的である。
事件番号: 昭和37(オ)1260 / 裁判年月日: 昭和38年9月6日 / 結論: 棄却
与信契約および継続的保証契約において極度額、責任限度額および期間の定めがない場合には、保証人は、取引慣行ならびに信義則に照らして相当と認められる期間が経過した後は、保証契約の解約告知権を取得するものと解すべきである。