判旨
請負代金債権の一部が下請業者に譲渡された場合において、債務者(発注者)が承諾書をもってこれに承諾したときは、特段の事情がない限り、有効な債権譲渡としての対抗要件を具備する。
問題の所在(論点)
請負代金債権の一部譲渡に対し、債務者が承諾書をもって承諾を与えた場合、当該譲渡の効力および対抗要件は認められるか。
規範
債権譲渡につき、債務者が異議をとどめない承諾(民法467条1項・2項)をした場合、当該譲渡はその承諾の時をもって債務者及び第三者に対抗することができる。特に、請負代金債権の一部を目的とする譲渡であっても、債務者が内容を特定した上で承諾書等の書面により承諾した場合には、譲渡の効力が確定する。
重要事実
上告人(歌志内市)は、訴外会社に対し校舎新築工事を代金961万5000円で発注した。被上告人(下請業者)は、訴外会社との間で建具製作取付工事を代金43万5000円で下請契約した。その後、被上告人は、訴外会社が上告人に対して有する請負代金債権のうち43万5000円分の譲渡を受けた。この際、債務者である上告人は「承諾書」を作成し、当該債権譲渡を承諾した。
あてはめ
本件では、訴外会社から被上告人に対し、請負代金の一部である43万5000円の債権譲渡が行われている。債務者である上告人は、単なる認識の表示にとどまらず、明示的に「承諾書」という書面をもって当該譲渡を承諾している。このような態様による承諾は、債務者が譲渡の事実を確定的に認識し、かつこれを是認したものといえる。したがって、民法上の対抗要件を具備する有効な承諾として機能すると解される。
結論
上告人の承諾は有効であり、被上告人は上告人に対して譲受債権を行使することができる。
実務上の射程
本判決は、債権の一部譲渡における債務者の承諾の有効性を肯定したものである。実務上、公共工事等の下請保護の観点からなされる債権譲渡において、発注者が交付する「承諾書」が民法467条の対抗要件を充足することを裏付ける判例として活用できる。答案上は、債権譲渡の対抗要件(承諾)の具備が問題となる場面で、事実認定の根拠として引用すべきである。
事件番号: 昭和35(オ)70 / 裁判年月日: 昭和36年7月20日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】債務全額の弁済としてなされた供託に対し、債権者が一部弁済として受領する旨の異議を留保したときは、債権者は残額の請求を妨げられず、その留保の意思表示の相手方は供託所であっても供託者であってもその効力に変わりはない。 第1 事案の概要:債権者(被上告人)と債務者(上告人)との間で債務金額に争いがあった…