一、共同買受人であるとの理由のみから直ちに買受代金債務を買受人全員の連帯債務であるとすることはできない。 二、連帯債務者の一人が消滅時効完成後債務を承認した場合において、連帯債務者間の各負担部分を確定することなく、直ちに、同人が全債務について消滅時効を援用しえないとすることはできない。
一、連帯債務の成立について理由不備の違法があるとされた事例 二、連帯債務者の一人が消滅時効完成後債務を承認した場合において、同人が全債務について消滅時効を援用しえないとした判断に理由不備があるとされた事例
民法432条,民法428条,民法439条,民法440条,商法511条
判旨
連帯債務者の一人が時効完成後に債務を承認した場合でも、直ちに信義則上全額について時効援用が制限されるわけではなく、各債務者の負担部分や債務の性質を十分に考慮すべきである。
問題の所在(論点)
共同買受人が負う債務が当然に連帯債務となるか。また、連帯債務者の一人が時効完成後に債務の一部を承認した場合、信義則を理由に直ちにその全額について時効援用が制限されるか。
規範
連帯債務において、一人の債務者がした時効完成後の債務承認は、相対的効力しか有しない(民法441条、旧440条)。したがって、一部の債務者が承認した事実のみをもって、直ちに信義則を理由として全額につき時効援用を封じることはできず、各債務者の負担部分(旧439条参照)や債務が発生した原因(契約上の特約、不可分債務、商事債務等)を具体的に検討し、その性質を明らかにする必要がある。
重要事実
上告人とその子Dは、被上告人との間で物品供給契約を締結し、共同買受人として売掛代金債務を負っていた。本件債務の時効完成後、上告人は残金の一部を支払うことで債務を承認した。その後、上告人が消滅時効を援用したところ、原審は、共同買受人である以上連帯して支払うべき債務であり、かつ自ら債務を承認した以上、信義則上時効援用は許されないと判断した。
あてはめ
共同買受人の債務は、当然に連帯債務になるとは限らず、分割債務や不可分債務の可能性もある。本件において連帯債務とされる場合でも、民法上の相対的効力の原則に鑑みれば、上告人とDの各負担部分のいかんは、時効消滅の範囲を決する上で無視できない重要事項である。原審は、債務が連帯債務となる法的根拠や負担部分を十分に確定せず、単に一部支払(承認)があったことのみを理由に信義則を適用して全額の時効援用を否定しており、審理不尽・理由不備がある。
結論
一部承認のみをもって直ちに信義則による時効援用制限を認めることはできず、債務の性質や負担部分を審理させるため、原判決を破棄し差し戻す。
実務上の射程
時効完成後の承認と援用権の喪失に関する論点において、連帯債務等の人的関係が介在する場合の射程を画定する際に用いる。単なる個別債務者の信義則の問題に解消せず、連帯債務の相対的効力原則や各債務者の負担部分との調整を要求する点で、答案上の緻密な「あてはめ」の指針となる。
事件番号: 昭和33(オ)743 / 裁判年月日: 昭和37年5月18日 / 結論: 破棄差戻
売主が商人であるとしても、単にそれだけで取引の相手方のためにも商行為が成立し、商法第五一一条第一項が買主側に適用されるとはかぎらない。