原判決記載の証拠によれば債務を免除した事実が認められるのに、債務の免除は認められず連帯の免除が認められると認定したのは、証拠によらずに事実を認定した違法がある。
証拠によらず事実を認定した違法があるとして破棄した一事例。
民訴法257条,民訴法394条
判旨
連帯債務者の一人に対して債務の免除がなされた場合、民法441条(旧437条)に基づき、その免除された債務者の負担部分については、他の連帯債務者のためにも絶対的効力を生じる。
問題の所在(論点)
連帯債務者(または連帯保証人)の一人に対して「その余の債務の免除」がなされた場合、他の連帯債務者の債務範囲にどのような影響を及ぼすか。債務の免除(旧437条、現441条)と連帯の免除(旧445条、現行法で明文削除)の区別が問題となる。
規範
連帯債務者の一人に対して債務の免除がなされたときは、その債務者の負担部分についてのみ、他の連帯債務者の利益のためにもその効力を生ずる(民法441条。改正前旧437条と同様の規律)。これは、特定の債務者のみを解放する意思であっても、他の債務者の求償関係を簡明にする等の趣旨に基づく絶対的効力である。
重要事実
債権者である被上告人は、連帯保証人であるH社およびG社からそれぞれ内入弁済を受けた際、両社に対して「その余の債務を免除」した。一方で、同じく連帯保証人である上告人に対しては免除を行っていなかった。原審は、この事実を連帯の免除(債務自体は残るが連帯関係のみを解消すること)にすぎないと判断し、上告人の債務消滅を認めなかった。
あてはめ
本件証拠によれば、被上告人はH社およびG社に対し、弁済後の「残債務を免除」しており、これは連帯の免除ではなく債務の免除(旧437条)にあたると評価される。債務の免除には絶対的効力があるため、H社およびG社のそれぞれの負担部分については、上告人の債務も当然に消滅する。原審がこれを連帯の免除と認定し、上告人の債務額に影響しないとしたのは事実誤認および法の解釈誤りである。
結論
H社およびG社に対する債務免除の効力は、両社の負担部分の限度で上告人にも及ぶ。したがって、原判決のうち上告人の敗訴部分を破棄し、差し戻す。
実務上の射程
連帯債務者の一人に免除をする際、他の債務者の債務を減らしたくない場合は、免除ではなく「履行の請求をしない(合意による不提訴)」に留める等の実務的配慮が必要であることを示唆する。答案上は、絶対的効力の数少ない例外の一つとして、負担部分の算出とともに記述する。
事件番号: 昭和34(オ)27 / 裁判年月日: 昭和36年10月19日 / 結論: 棄却
「ローヤル」という商号を用い毛布、洋服生地販売商を営む甲が、乙に右営業店舗内の一部を貸し与え、「ローヤル商会」或いは「ローヤル商会卸部」という類似商号を使用して洋服生地の卸売をすることを終始許諾してきた等原審認定の事実関係のもとでは、乙と取引した丙が乙の営業を甲の営業の一部であると誤認したことは、已むを得ないところであ…