判旨
訴訟目的での債権譲渡(信託法10条、旧11条)の禁止規定に違反するか否かは、譲渡の経緯、対価の有無、譲受人の意図などの諸事情を総合して判断されるべきである。
問題の所在(論点)
特定の債権譲渡が、信託法10条(旧11条)にいう「訴訟行為をさせることを主たる目的とする信託」に該当し、公序良俗ないし強行法規違反として無効となるか。
規範
信託法10条(旧11条)は、訴訟行為をさせることを主たる目的として信託(債権譲渡)を行うことを禁止している。その判断においては、譲渡の形態のみならず、譲受人が訴訟追行を予定していたか、譲渡に至る経緯や動機、対価の支払状況等の実態を考慮して、脱法的な訴訟信託に該当するかを判断する。
重要事実
債権者Dは、債務者である上告人らに対し金員を貸与し、内容証明郵便で支払を請求した。その後、Dは被上告人に対し当該債権を譲渡した。上告人(債務者)側は、この債権譲渡が「訴訟行為をさせることを主たる目的とする信託」であり、信託法(旧11条)に違反し無効であると主張して争った。
あてはめ
判決文によれば、原審において挙示された証拠(甲四号証等)や事実関係を検討した結果、本件債権譲渡が信託法11条(旧法)に違反するとの主張は認められないと判断された。具体的には、貸付の合意や請求の事実に照らし、譲渡が単に訴訟を目的とした形式的なものとは断定できず、正当な譲渡目的を否定するに足りる証拠がないと解される。上告人の主張は、原審の事実認定や証拠の取捨選択を非難するものにすぎない。
結論
本件債権譲渡は信託法11条(旧法)に違反せず有効であり、被上告人による請求は認められる。上告棄却。
実務上の射程
司法試験においては、債権譲渡の有効性が争われる場面で、実質的な回収代行を目的とした譲渡が訴訟信託の禁止に抵触しないかを検討する際に用いる。事実認定の要素として、譲渡人と譲受人の関係、対価の有無、訴訟提起までの期間等を総合考慮する枠組みとして活用できる。
事件番号: 昭和48(オ)660 / 裁判年月日: 昭和48年12月25日 / 結論: 棄却
訴訟行為をさせることを主たる目的として債権が譲渡されたときは、譲受人がみずから訴訟を追行せず、弁護士に訴訟の委任をした場合でも、信託法一一条の適用を妨げない。