判旨
賃貸借契約は原則として諾成契約であるが、当事者が契約書の作成をもって確定的に契約を締結する趣旨である場合には、契約書の作成がない限り契約は成立しない。
問題の所在(論点)
民法601条に基づく賃貸借契約の成立要件に関連し、諾成契約であるはずの賃貸借において、当事者が契約書作成を重視していた場合に、書面なしに契約の成立を認めることができるか。
規範
賃貸借契約は諾成契約であるものの、契約当事者が契約書の作成をもって確定的に契約を締結する趣旨である場合には、合意のみでは足りず、当該書面の作成を待って契約が成立すると解すべきである。
重要事実
上告人はDとの間で土地賃貸借契約を締結したと主張したが、Dは契約書の作成をもって確定的に契約を締結する趣旨で交渉に応じていた。実際には、いまだ契約書が作成されておらず、権利金の授受も行われていなかった。また、上告人が第三者Eに交付した賃料がDに帰属したと認める証拠も存在しなかった。
あてはめ
本件では、賃貸人Dが契約書の作成を契約締結の確定的な条件とする趣旨で交渉に臨んでいたと認められる。このような状況下では、契約書が作成されていない以上、上告人とDとの間に確定的な合意があったとはいえない。また、権利金の未授受や賃料の帰属不明といった事実は、契約成立を裏付ける客観的事実を否定する方向に働く。したがって、具体的な賃貸借契約が成立したとは認められない。
結論
契約書の作成を契約成立の条件とする趣旨が認められる本件においては、契約書が作成されていない以上、土地賃貸借契約は成立していない。
実務上の射程
契約成立時期の認定に関する射程。実務上、大規模な不動産取引や権利金授受を伴う契約では「契約書作成時」を成立時期とする当事者の合理的意思が認められやすく、諾成契約の原則が修正されることを示す。答案では、契約の成否が争われる場面で、交渉の経緯や書面作成の予定の有無から当事者の合理的意思を解釈する際の論拠として使用する。
事件番号: 昭和24(オ)343 / 裁判年月日: 昭和25年8月22日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】口頭弁論期日の指定は必ずしも書面で行うことを要せず、裁判官の記名押印等により当該裁判官の意思に基づきなされたことが認められれば適法である。 第1 事案の概要:上告人は、第一審の記録における弁論再開決定書(74丁)と期日指定に関する書面(75丁)との間に契印がないこと、および後者の書面に裁判官の署名…
事件番号: 昭和44(オ)332 / 裁判年月日: 昭和44年7月24日 / 結論: 棄却
従前の土地の一部に賃借権を有する者は、右賃借権について権利指定の届出をした場合であつても、区画整理事業の施行者から仮換地上の使用収益部分の指定を受けないかぎり、仮換地を現実に使用収益する権限を有しない。