判旨
建物の賃貸借契約において、建物が朽廃の程度に達した場合には、借地権(旧借地法下)と同様に建物の損壊により賃貸借関係が終了すると解される。
問題の所在(論点)
旧借地法下の建物賃貸借において、建物がどの程度の損壊状況に至れば「朽廃」として賃貸借関係が当然に終了するか。
規範
建物賃貸借において、建物が「朽廃」したといえる場合には、賃貸借の目的物が客観的に滅失したのと同視でき、契約関係は当然に終了すると解される。
重要事実
本件建物の賃借人に対し、賃貸人が建物の老朽化等を理由に契約の終了を主張した。原審は、証拠に基づき、本件建物が当時の状況において「朽廃」の程度に達していたと認定した。これに対し、上告人は事実認定の不当や証拠の取捨選択の誤りを主張して上告した。
あてはめ
原判決が挙げた証拠および認定した事実関係によれば、本件建物は当時すでに「朽廃」の程度に達していたと判断される。上告人の主張は、原審の証拠取捨や事実認定を争うものにすぎず、原判決の判断過程に瑕疵(かきん)は認められない。したがって、建物が朽廃したという事実認定は維持されるべきである。
結論
本件建物は朽廃しており、これに伴い賃貸借契約も終了したとする原審の判断は正当である。したがって、本件上告は棄却される。
実務上の射程
建物の「朽廃」による賃貸借終了を認めた事例。現行の借地借家法下でも、建物の滅失により賃貸借が終了する原則は維持されているが、一時的な損壊ではなく、修繕が不可能または経済的に著しく不合理な状態(朽廃)であるかが実務上の判断のポイントとなる。
事件番号: 昭和30(オ)750 / 裁判年月日: 昭和33年10月17日 / 結論: 棄却
木造建物が、その柱、桁、屋根の小屋組などの要部に多少の腐蝕個所がみられても、こちらの部分の構造にもとずく自らの力で屋根を支えて独立に地上に存立し、内部への出入に危険を感じさせることもないなど原審認定の状況(原判決理由参照)にあるときは、右建物は未だ借地法第一七条第一項但書にいう朽廃の程度に達しないものと解すべきである。
事件番号: 昭和43(オ)637 / 裁判年月日: 昭和44年4月15日 / 結論: 破棄差戻
建物所有を目的とする借地契約においては、その借地上の建物に対し通常の域をこえる大修繕をした場合には、その借地契約は、右建物が現実に朽廃していなくても、その修繕前の建物が朽廃すべかりし時期に終了するものと解すべきである。
事件番号: 昭和36(オ)321 / 裁判年月日: 昭和36年11月30日 / 結論: 棄却
建築以来六三年余を経た草葺平家建居宅の柱の大半は下部が腐蝕し、屋根には一部雨漏りがあり、周囲の壁も地面に接着する部分において一部くずれ落ち、家屋の傾斜は倒壊をおそれられる状態であり、近隣の人もそれをおそれて警察署に陳情し、その結果警察署の警告が発せられた等原審認定の事実関係のもとで当該家屋が既に朽廃の状況にあつたと判定…