判旨
公職選挙法251条及び251条の2に基づく当選無効の要件となる選挙犯罪の成否は、専ら刑事訴訟手続による確定裁判によってのみ判定されるべきであり、選挙管理委員会や行政裁判所が独自に審理判定することはできない。
問題の所在(論点)
公職選挙法251条または251条の2に規定される選挙犯罪の事実があることを理由に当選無効を主張する場合、選挙管理委員会や行政訴訟を審理する裁判所は、刑事確定判決がない状態でも当該犯罪事実の有無を独自に審理判定できるか。
規範
公職選挙法251条及び251条の2の趣旨は、当選人や選挙運動総括主宰者等が選挙犯罪を犯し、刑事訴訟手続に従い裁判所の確定裁判により刑に処せられたときに当選を無効とする点にある。したがって、選挙犯罪の存否及び量刑の判定は、専ら刑事訴訟手続による裁判所の裁判によってのみなされるべきであり、選挙管理委員会や当選の効力を審理する裁判所には、その審理判定の責務権限はない。
重要事実
上告人は、当選人D側に公職選挙法上の犯罪事実があると主張し、同法206条及び207条に基づく異議申立て・訴願を経て、当選の効力に関する裁決の取消しを求めて提訴した。しかし、Dが当該犯罪事実により有罪の確定裁判を受けた事実は認められなかった。
あてはめ
公職選挙法上の当選無効規定は、刑事手続による確定裁判を前提としている。本件において、当選人Dが主張された犯罪事実により有罪の確定裁判を受けた事実は主張立証されておらず、認められない。したがって、選挙管理委員会が訴願裁決に際して犯罪事実の有無を審理しなかったことは適法であり、裁判所もまた、刑事手続を経ずに独自に犯罪の成否を認定して当選を無効とすることは許されない。
結論
選挙犯罪の存否は刑事確定裁判によるべきであり、行政手続や当選無効訴訟において独自に審理判定することはできない。したがって、本件上告は棄却される。
実務上の射程
当選無効の訴え等において、連座制等の選挙犯罪を理由とする場合に、刑事手続と行政・行政訴訟手続の役割分担(刑事先議)を明確にした判例である。答案上は、行政庁や裁判所の審理権限の限界を論ずる際の根拠として活用できる。
事件番号: 昭和31(オ)290 / 裁判年月日: 昭和31年7月19日 / 結論: 棄却
裁判所は当事者の主張に拘束せられることなく投票の効力を判断することができる。