一 公職選挙法にいう出納責任者とは、同法第一八〇条所定の手続により出納責任者として選任届出された者を指し、その者が実際に出納責任者として同法に定める職務を行なつたと否とを問わない。 二 公職選挙法第二五一条の二項一項により、出納責任者の選挙犯罪を理由として当選人の当選を無効とするためには、出納責任者と認められる者が、同項に掲げる罪を犯したものとして刑に処せられたことが証明されれば足りる。
一 公職選挙法における出納責任者の意義 二 公職選挙法第二五一条の二項一項所定の規定による当選無効の要件に関する審査の範囲
公職選挙法180条,公職選挙法211条,公職選挙法251条の2
判旨
公職選挙法上の「出納責任者」とは、適法に選任・届け出がなされた者を指し、実際に出納事務に関与したか否かを問わず、その者が買収等の罪で刑に処せられた場合には当選無効の効力が生じる。
問題の所在(論点)
公職選挙法251条の2所定の「出納責任者」に該当するためには、選任届出がなされていることに加え、現実に当該職務に従事していることが必要か。また、実体のない届出上の責任者の行為によって当選を無効とすることが憲法に違反しないか。
規範
公職選挙法251条の2にいう「出納責任者」とは、同法180条の手続により出納責任者として選任届出された者をいう。したがって、当該届出がなされた者であれば、実際に出納責任者としての職務(出納事務への関与等)を行ったか否かを問わず、同条に定める連座制の適用対象となる。
重要事実
上告人の選挙において、訴外Dが出納責任者として届け出られていたが、Dは公職選挙法221条違反(買収等)の罪で有罪判決を受け、その判決が確定した。上告人は、Dは届け出こそなされていたものの、実際には出納事務に何ら関与しておらず、同法にいう「出納責任者」に当たらないため、自らの当選を無効とすることは憲法44条に違反すると主張して争った。
事件番号: 昭和35(オ)1400 / 裁判年月日: 昭和36年3月7日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】公職選挙法(昭和30年法律第121号改正前)221条に基づき当選が無効とされる「出納責任者」とは、単に形式上の選任にとどまらず、実質的にもその職務を遂行する地位にある者を指す。 第1 事案の概要:上告人の選挙において、Gが法定の出納責任者として届け出られていたが、上告人は真実の出納責任者はFであり…
あてはめ
公職選挙法180条に基づき適法に届け出られた者は、同法上の形式的な地位を有する。連座制の趣旨は選挙の公正を確保する点にあり、責任の所在を明確にするために届出を重視している。本件において、Dが出納責任者として届け出られた事実に争いはない。また、Dが同法221条の罪を犯して刑に処せられたことも証拠により確定している。したがって、Dが実際に職務を行ったか否かに関わらず、Dは同法上の出納責任者に該当し、上告人の当選は無効となる。このような解釈をとっても、連座制の合憲性に関する判例に照らし、憲法44条等の規定に違反するものではない。
結論
出納責任者の認定は届出の有無により形式的に決まる。実際に出納事務に従事していない出納責任者の有罪確定により、当選人の当選は無効となる。
実務上の射程
連座制における「出納責任者」の定義を形式的な届出によって決めることを示した重要判例である。答案上では、連座制の適用場面において「実質的な関与」の有無で責任を回避しようとする主張を排斥する際の論拠として使用する。また、連座制の合憲性を前提としつつ、届出の重みを強調する文脈で有用である。
事件番号: 昭和39(行ツ)55 / 裁判年月日: 昭和39年10月13日 / 結論: 棄却
公職選挙法第二五一条の二及び第二一一条の規定は、憲法第一三条、第一五条及び第三一条に違反するものではない。