出納責任者の選挙犯罪により、当選人について連座による当選無効の訴訟が提起された場合において、右出納責任者について恩赦があつても、そのことは、右訴訟の結果に影響を及ぼすものではない。
出納責任者の選挙犯罪による当選無効の訴訟と恩赦
公職選挙法251条の2,公職選挙法211条
判旨
特赦は有罪の言渡しの効力を失わせるが、有罪判決に基づく既成の効果には影響を及ぼさず、その効力は将来に向かってのみ生じる。したがって、出納責任者が選挙犯罪により有罪判決を受けた事実に変わりはなく、特赦後であっても連座制による当選無効の効力は否定されない。
問題の所在(論点)
選挙運動の出納責任者が特赦を受けた場合、公職選挙法251条の2に基づく当選無効という「既成の効果」に影響を及ぼすか。恩赦の効力の及ぶ範囲が問題となる。
規範
特赦を含む恩赦は、有罪の言渡しの効力を失わせるが、その効力は将来に向かって生ずるにとどまり、有罪の言渡しに基づく既成の効果はこれによって変更されることはない(恩赦法5条、11条)。
重要事実
上告人の選挙運動における出納責任者Dが、公職選挙法違反により有罪判決を受けた。これに基づき、公職選挙法251条の2(連座制)および211条の規定によって上告人の当選を無効とする判断が下された。その後、Dに対して特赦が行われたため、上告人は特赦により連座制の前提となる有罪判決の効力が消滅し、当選無効も回避されるべきであると主張して上告した。
事件番号: 昭和44(行ツ)43 / 裁判年月日: 昭和44年8月29日 / 結論: 棄却
出納責任者の選挙犯罪により、当選人について連座による当選無効の訴訟が提起された場合において、右出納責任者について復権があつても、そのことは、右訴訟の結果に影響を及ぼすものではない。
あてはめ
本件において、出納責任者Dが選挙犯罪により有罪判決を受けた事実は、上告人の当選を無効とするための法的要件を満たすものである。特赦は恩赦法に基づき将来に向かって有罪判決の効力を失わせるにすぎない。したがって、特赦以前に発生した「出納責任者の有罪判決」という客観的事実、およびそれに基づき生じた当選無効という法律上の既成の効果は、特赦によって遡及的に消滅したり、変更されたりするものではない。
結論
特赦があっても、公職選挙法上の連座制に基づく当選無効の判断に影響はなく、上告人の当選は無効である。
実務上の射程
恩赦による刑の消滅や資格回復が、行政処分や他の公法上の法律関係に遡及しないことを示した。司法試験においては、行政法や憲法の統治分野において、恩赦の効力(遡及効の否定)を論ずる際の根拠として活用できる。特に「既成の効果」の不変性を強調する文脈で有効である。
事件番号: 昭和40(行ツ)74 / 裁判年月日: 昭和41年6月23日 / 結論: 棄却
一 公職選挙法にいう出納責任者とは、同法第一八〇条所定の手続により出納責任者として選任届出された者を指し、その者が実際に出納責任者として同法に定める職務を行なつたと否とを問わない。 二 公職選挙法第二五一条の二項一項により、出納責任者の選挙犯罪を理由として当選人の当選を無効とするためには、出納責任者と認められる者が、同…