農地法第八五条第一項に掲げる処分により違法に権利を害されたとする者は、行政事件訴訟特例法第二条の定めるところに従い、右法条による訴願を経た後でなければ、出訴することが許されない。
農地法第八五条第一項に掲げる処分により権利を害されたとする者の出訴と訴願経由の要否
行政事件訴訟特例法2条,農地法85条1項
判旨
行政処分に対する出訴の前提要件として訴願前置主義を採用することは法律の裁量に委ねられており、憲法32条に違反しない。また、農地法に基づく処分について訴願を必須の要件と解することも、裁判を受ける権利を不当に侵害するものではない。
問題の所在(論点)
行政処分に対する出訴の要件として訴願前置主義を定めることが、憲法32条および裁判所法3条に違反し許されないのではないか。
規範
行政処分に対する出訴につき、審査請求(訴願)をその前提要件とするかどうかは法律の定めるところに任されており、審査請求の期間等が不合理に短くない限り、訴願前置主義を採用することは憲法32条(裁判を受ける権利)に違反しない。
重要事実
上告人は、農地法に基づく処分に対して訴訟を提起したが、当時の行政事件訴訟特例法2条(現行の行訴法8条1項に相当)および農地法85条の規定により、訴願(審査請求)の手続きを経ていないことを理由に出訴が制限されるかが争点となった。上告人は、訴願制度の不備や訴願前置主義そのものが憲法32条に違反すると主張した。
事件番号: 昭和37(オ)1349 / 裁判年月日: 昭和38年7月19日 / 結論: 棄却
自作農創設特別措置法第四七条の二が憲法第三二条に違反しないとする昭和二四年五月一八日大法廷判決(昭和二三年(オ)第一三七号、民集三巻六号一九九頁)の趣旨に徴し、右法規と同趣旨の行政事件訴訟特例法第五条は、憲法の同条規に違反しないものといわねばならない。
あてはめ
農地法85条は訴願庁を明確に規定しており、訴願期間については一般法である訴願法の定め(処分後60日)が適用される。この60日という期間は、権利救済の機会を確保する上で不合理に短いものとはいえない。したがって、法律が行政処分の専門性や適正化を鑑みて訴願を経ることを求めている以上、これを出訴の要件と解することは合理的な立法裁量の範囲内である。
結論
行政事件訴訟特例法2条が訴願前置主義を採用していることは憲法32条に違反せず、農地法上の処分についても同様である。したがって、訴願を経ない本件訴えは不適法である。
実務上の射程
現行の行政事件訴訟法8条1項(自由選択主義)のもとでは、個別法に「審査請求に対する裁決を経た後でなければ提起できない」旨の定めがある場合に限り、例外的に前置主義が適用される。本判例は、かかる個別法による制約が憲法上許容されることを示しており、行政処分の特殊性に基づく合理的な制約を肯定する文脈で活用できる。
事件番号: 昭和25(オ)113 / 裁判年月日: 昭和26年8月1日 / 結論: 棄却
一 自作農創設特別措置法第六条第五項の公告には、単に買収計画を定めた旨の記載があれば足り、買収すべき農地、買収時期、対価の記載がなければならないものではない。 二 地区農地委員会の設けられている場合には、自作農創設特別措置法第六条第五項の公告は、地区農地委員会の事務所の掲示場に掲示して行うべきである。 三 農地買収計画…
事件番号: 昭和34(オ)672 / 裁判年月日: 昭和36年1月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】行政処分を行った旨の通知が、それ自体として新たな権利義務の変動を生じさせる公権力の行使に当たる場合には、抗告訴訟の対象となる行政処分に該当する。 第1 事案の概要:上告人(行政庁側)は、昭和23年に自作農創設特別措置法に基づき被上告人らに対して農地売渡計画を決定し、売渡通知書を交付した。しかし、昭…
事件番号: 昭和29(オ)550 / 裁判年月日: 昭和31年4月13日 / 結論: 棄却
昭和二四年法律第二一五号による農地調整法改正前においても、同法第四条によつて市町村農地委員会が行う農地等の所有権、賃借権等の設定、移転等の承認は同委員会の自由な裁量に委せられていたものと解すべきでない。
事件番号: 昭和31(オ)235 / 裁判年月日: 昭和32年7月19日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】農地委員会は、遡及買収申請に資格上の瑕疵がある場合であっても、自創法6条の5に基づき職権で買収計画を定めることができるため、当該買収処分が当然無効になることはない。 第1 事案の概要:上告人とDとの間には農地の賃貸借契約が存在しており、当該契約は適法に解約されていなかった。その後、Eが当該農地につ…