一 自作農創設特別措置法第六条第五項の公告には、単に買収計画を定めた旨の記載があれば足り、買収すべき農地、買収時期、対価の記載がなければならないものではない。 二 地区農地委員会の設けられている場合には、自作農創設特別措置法第六条第五項の公告は、地区農地委員会の事務所の掲示場に掲示して行うべきである。 三 農地買収計画の取消又は変更を求める訴を提起するには、自作農創設特別措置法第七条の異議、訴願によつて救済を得られなかつた場合に限る。 四 行政事件訴訟特例法第二条は、憲法第三二条に違反しない。
一 自作農創設特別措置法第六条第五項の公告に記載すべき事項 二 地区農地委員会の設けられている場合における公告の場所 三 農地買収計画の取消又は変更を求める訴と自作農創設特別措置法第七条の異議訴願との関係 四 行政事件訴訟特例法第二条と憲法第三二条
自作農創設特別措置法(昭和21年法律43号)6条5項,自作農創設特別措置法6条5項,自作農創設特別措置法48条,自作農創設特別措置法7条,自作農創設特別措置法施行令(昭和21年勅令621号)37条,自作農創設特別措置法施行令(昭和21年勅令621号)40条,行政事件訴訟特例法2条,憲法32条
判旨
行政事件訴訟における審査請求前置主義(旧訴願前置主義)は憲法32条に違反せず、不服申立てを行わなかったことに宥恕すべき事由があるとしても、それが当然に「正当な事由」として前置手続の免除を認める根拠にはならない。
問題の所在(論点)
1. 法律が行政不服申立てを訴訟の前提とする(訴願前置主義)ことは、憲法32条に違反するか。 2. 公告の不備や通知の欠如により期間内に不服申立てができなかった事情は、行政事件訴訟特例法2条但書の「正当な事由」に該当し、前置手続を免除されるか。
規範
1. 行政機関の裁決等を訴訟提起の前提条件とするか否かは法律の定めに委ねられており、訴願前置主義を定めることは、裁判所が終審として裁判を行う限り、憲法32条に違反しない。 2. 行政事件訴訟特例法2条但書の「正当な事由」とは、不服申立てを経ることが著しく困難または不可能な客観的事情を指し、単に期間徒過について宥恕すべき事情があるというだけでは足りない。
事件番号: 昭和25(オ)341 / 裁判年月日: 昭和27年4月18日 / 結論: 破棄差戻
行政事件訴訟特例法施行の日に農地買収計画に対する異議申立期間が満了し、当時の交通事情等により訴訟関係人らが同法の内容を知り得なかつた事情があるならば、同法施行後にかいても、右買収計画の取消を求める訴を提起するについて異議、訴願を経ない正当な事由があるものというべきである。
重要事実
上告人は、農地法に基づく農地買収計画に対し、法定の期間内に異議申立て(不服申立て)を行わなかった。その後、上告人は買収計画の取消しを求めて提訴したが、原審は不服申立てを経ていないことを理由に訴えを却下した。上告人は、公告に買収地の詳細等の記載がなく、計画の決定通知もなかったため期間内に申し立てられなかったものであり、これは「正当な事由」に該当する、また訴願前置主義自体が憲法32条(裁判を受ける権利)に反すると主張して上告した。
あてはめ
1. 憲法76条2項は行政機関による裁定を前提としており、最終的に裁判所が審理する仕組みである以上、立法府が合理的な裁量で前置主義を採用することは合憲である。 2. 本件公告は、買収計画の縦覧期間を定める形式であったが、これによって関係者は計画の存在を知り縦覧する機会を得られるため、公告として有効である。 3. 上告人が主張する「公告が具体的でない」「通知がなかった」といった事情は、不服申立て制度上の救済理由(宥恕すべき事由)にはなり得ても、直ちに前置手続そのものをバイパスして訴訟を提起できる「正当な事由」には当たらない。したがって、適法な不服申立てを経ていない本件訴えは不適法である。
結論
訴願前置主義は合憲であり、上告人が主張する事情は前置手続を免除する「正当な事由」には該当しないため、訴えを却下した原判決は妥当である。
実務上の射程
行政不服審査法上の審査請求前置主義が定められている場合(例:税務訴訟)において、手続を欠いたまま提訴した際の「正当な理由」(行訴法8条1項但書)の解釈指針として機能する。手続的懈怠を正当化するハードルが非常に高いことを示す判例である。
事件番号: 昭和25(オ)192 / 裁判年月日: 昭和26年9月11日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】農地売渡計画の公告は、売渡計画書の縦覧期間を定めた旨の記載があれば足り、売渡の相手方や対価等の詳細を記載する必要はなく、不服申立てを経ずに訴訟を提起できる「正当な事由」も認められない。 第1 事案の概要:上告人らは、B地区農地委員会が行った農地売渡計画の公告について、売渡の相手方や対価等の重要事項…
事件番号: 昭和36(オ)1289 / 裁判年月日: 昭和37年11月22日 / 結論: 棄却
判決が口頭弁論終結の日から約四年を徒過した後に言い渡されたという違法は、上告適法の理由とはならない。
事件番号: 昭和24(オ)129 / 裁判年月日: 昭和25年11月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】行政庁が買収計画への異議に対し法定期間内に決定を行わず、事実上計画から除外したとしても、正式な決定がない限り買収しないことが法律上確定したとはいえず、再度同一の買収計画を立てることは直ちに違法とはならない。 第1 事案の概要:上告人は、昭和22年3月になされた農地買収計画に対し異議を申し立てた。農…
事件番号: 昭和26(オ)55 / 裁判年月日: 昭和26年9月7日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】上告理由が民事上告事件の審判の特例に関する法律所定の事由に該当せず、かつ法令の解釈に関する重要な主張を含まない場合には、上告を棄却すべきである。 第1 事案の概要:上告人が提起した上告に対し、最高裁判所がその上告理由を検討したところ、当時の民事上告特例法に定められた上告受理の要件を満たしているか、…