判旨
売買の目的物である建物が抵当権の実行により競落された場合、売主の債務は履行不能となり、原則として債務者の責に帰すべき事由によるものと解される。また、保証人は主債務者の債務不履行による填補賠償債務についても保証責任を負う。
問題の所在(論点)
1.抵当権付建物の売買において、抵当権実行により競落されたことが民法415条の「債務者の責に帰すべき事由」による履行不能といえるか。 2.保証人は、保証契約時に予期していなかった内金相当額の損害賠償債務についても保証責任を負うか。
規範
1.建物売買において、引渡前に当該建物が抵当権実行により競落された場合、売主の義務は履行不能となる。この場合、履行不能が債務者の責に帰すべき事由によらないことについては債務者が立証責任を負い、特段の事情のない限り、抵当債務の不履行という債務者の帰責事由によるものと解するのが相当である。 2.保証人は、主債務者が債務不履行に陥った場合、それに伴う損害賠償債務(填補賠償債務)についても当然に保証責任を負う。
重要事実
被上告人(買主)と訴外D(売主)との間で建物の売買契約が締結され、代金の内金2万円が授受された。上告人は売主Dの債務を保証したが、当該建物には当初から抵当権が設定されており、引渡前に抵当権が実行され第三者が競落した。これにより売主の引渡債務が履行不能となったため、買主は保証人である上告人に対し、既払いの内金相当額を含む損害賠償(填補賠償)の支払いを求めた。上告人は、内金授受の事実を知らなかったことや、抵当権実行は予定されていたことであり帰責事由がないことを理由に責任を争った。
あてはめ
1.本件建物は抵当権実行により競落されており、売主の売渡義務は履行不能に帰している。抵当権実行による履行不能は、売主が抵当債務を弁済しなかったという帰責事由に基づくのが通常であり、本件においても特段の事情は認められない。したがって、売主は既受領の内金相当額について填補賠償債務を負う。 2.上告人は売主の債務を保証しているところ、保証人は主債務の不履行による損害賠償債務についても責任を負う。上告人が内金2万円の授受の事実を認識していなかったとしても、それは主債務の不履行から生じる損害賠償の範囲に含まれる以上、保証責任を免れない。
結論
売主の履行不能には帰責事由が認められ、保証人はその不履行に基づく填補賠償債務(既払代金相当額等)について保証責任を負う。したがって、上告人の支払義務を認めた原審の判断は正当である。
実務上の射程
抵当権実行による履行不能の帰責事由に関する立証責任を債務者側に課した点、および保証債務の範囲に主債務不履行による填補賠償が含まれることを明示した点に実務上の意義がある。答案上は、民法415条の帰責事由の有無や、447条1項の保証債務の範囲を論じる際の根拠として活用できる。
事件番号: 昭和25(オ)9 / 裁判年月日: 昭和29年1月28日 / 結論: 破棄差戻
【結論(判旨の要点)】当事者が主張していない重畳的債務引受の事実を裁判所が認定して判決の基礎とすることは、弁論主義に違反し許されない。 第1 事案の概要:被上告人(買主)は、売買契約の売主が上告人及び共同被告Dの2名であると主張した。これに対し、上告人は売主は自分単独であり、後に免責的債務引受がなされたと抗弁した。しか…