判旨
受託者が自己の責に帰すべき事由により受託物の返還義務を履行不能とした場合、寄託者に対して損害賠償義務を負う。
問題の所在(論点)
寄託契約における受託者の目的物返還義務が受託者の帰責事由により履行不能となった場合、受託者は損害賠償義務を負うか。
規範
寄託契約に基づく受託者の返還義務につき、受託者の責に帰すべき事由により当該義務が履行不能となった場合には、受託者は寄託者に対し、履行不能による損害賠償責任を負う(民法415条参照)。
重要事実
被上告人(寄託者)は、第三者との大豆売買契約において残代金の支払を受けられなかったため、引渡し未了の大豆を上告人(受託者・被告)に寄託した。その後、受託した上告人の責に帰すべき事由によって、上告人が負っていた本件大豆の返還義務が履行不能となった。
あてはめ
本件では、大豆の売買代金が支払われないという状況下で、売主である被上告人が上告人に大豆を寄託した事実が認められる。この寄託関係において、上告人の責に帰すべき事由により受託物である大豆の返還義務が履行不能となっている。したがって、債務不履行(履行不能)の一般原則に基づき、上告人は当該履行不能から生じた損害を賠償すべき義務を負うと解される。
結論
上告人は、自己の責に帰すべき事由による履行不能に基づき、被上告人に対し損害賠償義務を負う。
実務上の射程
寄託契約における受託者の善管注意義務違反(または特定の保管基準違反)の結果として返還が不可能になった場合の、典型的な損害賠償請求の構成を示すものである。答案上は、寄託契約の成立、返還義務の発生、帰責事由による履行不能、損害の発生という415条の要件検討の帰結として用いる。
事件番号: 昭和33(オ)377 / 裁判年月日: 昭和37年3月22日 / 結論: 棄却
執行吏が過失により有体動産の差押につき作成すべき調書に差押物の評価額を記載しなかつたことによつて債務者に損害を生じた場合には国家賠償の責任が成立する。
事件番号: 昭和34(オ)598 / 裁判年月日: 昭和36年12月19日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】売買の目的物である建物が抵当権の実行により競落された場合、売主の債務は履行不能となり、原則として債務者の責に帰すべき事由によるものと解される。また、保証人は主債務者の債務不履行による填補賠償債務についても保証責任を負う。 第1 事案の概要:被上告人(買主)と訴外D(売主)との間で建物の売買契約が締…
事件番号: 昭和29(オ)847 / 裁判年月日: 昭和30年8月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】寄託を委任したからといって、当然に寄託関係の終了に伴う返還を受ける権限まで付与されたとは解されず、代理権限なき者への返還は債務不履行を構成する。また、倉庫業者として当然払うべき注意義務を尽くさない限り、受取人に代理権限があると信じたことについて正当な理由があるとはいえない。 第1 事案の概要:債権…