判旨
行政機関の組織は法令で定められるべきであるが、合議体内部の運営方法の細目等は、法令の精神に反しない限り、法令を補充する意味で合議体自身が自主的に決定できる。また、農地買収計画における保有地の選定について、地主は特定の土地を選択する法律上の利益を有さず、通達違反のみをもって直ちに処分を違法とすることはできない。
問題の所在(論点)
1. 法令に定めのない「会長に事故がある際の最年長者による招集」を定めた委員会規程の有効性、およびこれに基づく会長解任の適法性。 2. 農地買収計画において、地主が保有地を自ら選択する法律上の利益を有するか。 3. 行政通達に反する処分や、知事への許可申請進達の遅延が買収処分の違法性を基礎づけるか。
規範
1. 権限を行使する行政機関の組織は法令で定められるべきであるが、合議体内部の運営方法の細目等は、法令の規定や精神に反しない限り、法令を補充する意味において合議体自体が自主的に決定し得る。 2. 農地買収計画において、農地所有者は買収免除となる保有地の選択権を有さず、自作農創設特別措置法6条4項の規定は地主の希望に拘束されることを定めたものではない。また、行政通達は法令ではないため、これに副わない処分であっても直ちに違法とはならない。
重要事実
村農地委員会のD会長は、委員多数による買収計画審議のための招集要求を拒んだため、委員会規程に基づき最年長委員Eが招集した委員会において解任された。また、同委員会は上告人の所有地を自創法に基づき買収する計画を樹立したが、上告人は「保有地の選択権が侵害された」「通達に違反している」「知事の許可申請が放置された」等として、買収処分の無効を訴えた。
あてはめ
1. 組織の基本は法令によるべきだが、招集権者が不在・不能の場合の代行者など内部運営の細目は、合議体の自主的決定に委ねられる。本件規程は法令を補充するもので有効であり、これに基づく解任も正当な理由(再三の招集拒絶)があるため適法である。 2. 自創法の規定は買収計画樹立時の勘案事項を定めたに過ぎず、地主の保有希望に拘束されるものではない。したがって、地主には特定の土地を保有地として選択する法律上の利益は認められない。 3. 通達は内部規範であり外部的拘束力を持たない。また、贈与の許可申請が放置されたとしても、許可がない以上は上告人所有地である事実に変わりはなく、職権濫用と認められない限り処分は違法とならない。
結論
事件番号: 昭和32(オ)440 / 裁判年月日: 昭和36年5月26日 / 結論: 棄却
未墾地買収においては、買収目的地の実測面積の表示を欠いた買収計画であつても、買収目的地の特定性が動かない限り、違法ではない。
1. 合議体は法令に反しない限り内部運営規則を自主的に制定でき、本件解任は有効である。 2. 地主に保有地の選択権はなく、通達違反や申請の遅延があっても、直ちに買収処分が違法となるものではない。
実務上の射程
行政組織法定主義の限界を画し、合議体における「自主的運営権」を認めた点で重要である。また、行政通達の法規範性を否定する法理や、行政指導・手続上の不行届きが当然には処分の違法性を導かないとする実務上の判断枠組みを示す際に引用すべき判例である。
事件番号: 昭和36(オ)947 / 裁判年月日: 昭和38年3月15日 / 結論: 棄却
被買収者が農地所在の村で農地委員の選挙権を行使した等の事実があつても、右買収基準時に教師として他村に転任しその学校住宅に家族とともに居住していたという事実関係のもとにおいては、その住所が当該農地の所在地にあつたと認めなければならないものではない。
事件番号: 昭和34(オ)1181 / 裁判年月日: 昭和37年3月23日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】自作農創設特別措置法に基づく農地の買収において、買収対象地の選択は行政庁の裁量に属し、地主に選択権はない。また、宅地化の予見可能性がない農地は同法5条5号の除外事由に該当しない。 第1 事案の概要:上告人の所有する本件農地に対し、国が自作農創設特別措置法に基づき買収処分を行った。これに対し上告人は…
事件番号: 昭和28(オ)451 / 裁判年月日: 昭和34年1月29日 / 結論: 棄却
同一土地につき二個の買収計画が並存することは相当でなく、両計画をともに取り消した上で新たに買収計画を定むべきであるとの理由で、町農業委員会の定めた農地買収計画を取り消す旨の訴願裁決があつた場合、町農業委員会が右趣旨に従い右土地につき再度買収計画を定めることは、訴願法第一六条に違反するものではない。
事件番号: 昭和30(オ)138 / 裁判年月日: 昭和31年5月29日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】行政処分が法律上の手続規定に違反してなされた場合であっても、その瑕疵が当然に処分を無効とするものではなく、出訴期間内に取り消されない限り、公定力により有効なものとして取り扱われる。 第1 事案の概要:自作農創設特別措置法に基づき農地の買収処分が行われた際、買収令書が真の所有者である上告人ではなく、…