判旨
売買契約等において授受される手附は、必ずしも解除権を留保する趣旨の解約手附(民法557条1項)に限られるものではなく、契約成立の証拠として授受される証約手附と認めることも妨げられない。
問題の所在(論点)
授受された手附が、常に民法557条1項の解約手附として扱われるべきか、それとも単なる証約手附として認定することが可能か(手附の性質決定の可否)。
規範
契約において授受される手附の性質は、当事者の意思解釈の問題である。民法557条1項は「解約手附」としての性質を推定するが、特約や当時の諸事情から、単に契約の成立を証する目的で交付された「証約手附」に過ぎないと認められる場合には、同条の解除権留保の効力は認められない。
重要事実
上告人は、授受された手附が解除権を留保した内容(解約手附)であると主張したが、原審(控訴審)は証拠(甲第2号証、甲第4号証等)を総合的に評価し、当該手附を解除権を留保したものとは認めず、証約手附と解し得る事実関係を認定した。上告人はこれを不服として、事実誤認および法解釈の誤りを理由に上告した。
あてはめ
原判決の認定によれば、提出された証拠を総合すれば本件手附を解除権留保の趣旨と認めなければならない必然性はなく、証約手附と認めることも可能である。このような原審の事実認定および意思解釈のプロセスには違法な点はなく、上告人の主張は独自の事実認定への非難にすぎない。したがって、原審が本件手附を解約手附ではないと判断したことは正当である。
結論
本件手附を証約手附と認めた原審の判断に違法はなく、民法557条1項の解除権留保を前提とした上告人の主張は認められない。
実務上の射程
事件番号: 昭和34(オ)1150 / 裁判年月日: 昭和37年6月7日 / 結論: 棄却
判決における事実および争点の摘示は、弁論を経た係争事実で判決をするのに必要なものを明らかにすれば足りる。
手附の性質が争点となる答案において、557条1項の推定を覆す特約や事実がある場合に、手附が証約手附に留まる可能性を指摘する根拠として活用できる。ただし、実務上は解約手附と推定されるのが原則であるため、本判決は個別事案の意思解釈の範囲を認めたものとして理解すべきである。
事件番号: 昭和33(オ)26 / 裁判年月日: 昭和34年7月2日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】売買の予約の成立を認めるためには、その前提となる事実について証拠に基づき合理的に認定する必要があり、供述内容が予約ではなく本契約の成立を指している場合には、予約の成立を認めることはできない。 第1 事案の概要:被上告人(原告)が上告人(被告)から土地200坪を単価140円で購入したと主張し、売買一…
事件番号: 昭和29(オ)464 / 裁判年月日: 昭和31年5月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】本件不動産の所有権移転登記が寄託の趣旨でなされたとの主張に対し、原審がそのような事実を認定していない以上、その前提を欠く論旨は上告理由として認められない。 第1 事案の概要:上告人は、本件不動産の所有権移転登記が「寄託」の意味でなされたものであると主張し、原判決の判断を不服として上告した。しかし、…
事件番号: 昭和37(オ)393 / 裁判年月日: 昭和41年11月25日 / 結論: 棄却
売主所有の土地について指定された換地予定地の一部を目的物として売買契約が成立した場合において、その契約の成立にいたるまでの経緯および右目的物に関し原審が確定したような事情(原判決理由参照)があるときは、同契約に基づき買主の取得する当該土地所有権移転請求権については、いわゆる選択債権に関する民法の規定を類推適用すべきであ…
事件番号: 昭和33(オ)258 / 裁判年月日: 昭和35年2月9日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】原審が行った証拠の取捨選択および事実認定が適法である限り、上告審においてこれと異なる事実を主張して原判決を非難することは、上告理由にならない。 第1 事案の概要:上告人らは、原審が認定した売買の事実について、証拠の取捨選択や事実認定に誤りがあるとして、原判決の違法を主張し、上告を申し立てた。なお、…