判旨
契約解除に伴う供託金を受領した事実のみをもって、直ちに解除を承認する意思表示があったとみることはできず、証拠関係に基づき個別に判断されるべきである。
問題の所在(論点)
契約解除を原因とする供託金の受領が、当該契約解除を承認する意思表示(または解除の有効性を争わない旨の合意)として認められるか。また、その認定における証拠判断の適否が問題となった。
規範
契約解除の効力を争っている当事者が、解除を前提として供託された金員を受領した場合であっても、その受領行為が直ちに解除を承認し、あるいは解除の効力を争わない旨の意思表示を包含するものと解することはできない。当該受領がいかなる法的意味を持つかは、受領に至る経緯や態様、証拠関係を総合して判断されるべきである。
重要事実
原告(被上告人)に対し、被告(上告人)が契約解除を主張し、これに伴う精算金等の供託を行った。原告は本件供託金を受領したが、その後の訴訟において契約解除の効力を争った。被告側は、供託金の受領をもって解除を承認したものであると主張し、証拠(乙第7号証の1〜4、第8号証の1〜4等)を提出したが、原審は解除の承認を認めなかった。
あてはめ
提出された各証拠(乙号証等)を検討しても、原告が契約解除を承認する確定的な意思を持って供託金を受領したと認めるには足りない。単に供託された金員を回収したという事実があるだけで、解除の有効性を争う姿勢と矛盾しない場合もあり得る。したがって、原審が解除の承認を否定した判断に、経験則違反や証拠法則違反の違法は認められない。
結論
本件供託金の受領をもって契約解除の承認があったとは認められない。上告棄却。
実務上の射程
事件番号: 昭和31(オ)686 / 裁判年月日: 昭和35年10月27日 / 結論: 棄却
一 契約解除の前提としての催告が有効であるためには、少くとも催告と同時に相手方が遅滞に付されることを要する。 二 双務契約上の債務の受領遅滞にある者が契約解除の前提としての催告をするためには、受領遅滞を解消させた上でこれをしなければならない。
契約解除の有効性が争われている場面で、形式的に供託金を受領した事実のみで直ちに「黙示の追認」や「解除の合意」を認定することは慎重であるべきとする。答案上は、解除の成否が争点となる場面で、事後の行動(金銭受領等)の法的性質を決定する際の判断枠組みとして活用できる。
事件番号: 昭和31(オ)836 / 裁判年月日: 昭和34年3月6日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】建物の引渡しや代金の支払という事実がある場合でも、それが直ちに売買契約の成立を裏付ける履行行為であるとは限らず、契約成立の有無は諸般の事情を総合して判断されるべきである。 第1 事案の概要:上告人と被上告人の間において、被上告人が空家一棟を引渡し、これに対し上告人が25万円を支払ったという事実が存…
事件番号: 昭和35(オ)505 / 裁判年月日: 昭和36年6月22日 / 結論: 棄却
双務契約上の債務が同時履行の関係に立つ場合、右契約を解除しようとする当事者の債務の履行の提供は、催告に指定された履行期日にこれをすれば足りる。
事件番号: 昭和32(オ)495 / 裁判年月日: 昭和35年3月1日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】売買契約の解除を主張するにあたり、解除の意思表示が単なる事情の説明に留まらず、予備的な主張としてなされたといえるためには、文言上その趣旨が明らかでなければならない。また、催告を欠く解除の意思表示は、有効な解除としての効力を認められない。 第1 事案の概要:不動産の売買契約において、売主(上告人)が…