判旨
弁論の再開は裁判所の職権に属する事項であり、裁判所が再開を命じなかったとしても直ちに違法とはならない。また、陳述されていない準備書面の記載内容について裁判所が釈明権を行使する義務はない。
問題の所在(論点)
裁判所が弁論再開の申立てを拒絶することの可否、および口頭弁論で陳述されていない準備書面の記載事項について裁判所が釈明権を行使する義務を負うか。
規範
弁論の再開(民事訴訟法153条参照)を許すか否かは、裁判所の合理的な裁量に基づく職権事項である。また、釈明権(同法149条)は、当事者が実際に主張した事項等について行使されるべきものであり、裁判所に提出されたものの口頭弁論で陳述されていない書面の記載内容にまで当然に及ぶものではない。
重要事実
上告人は原審において準備書面を提出していたが、記録上、当該準備書面が口頭弁論で陳述された事実は認められなかった。上告人は弁論の再開を申し立てたが、原審はこれを許さず判決に至った。上告人は、原審が弁論を再開しなかったこと、および準備書面の記載内容について釈明権を行使しなかったことが違法であるとして上告した。
あてはめ
まず、弁論再開は裁判所の職権に属するため、原審が再開を申し立てを許さなかった判断に直ちに違法性は認められない。次に、問題となっている準備書面は、原審の口頭弁論において陳述された形跡が記録上存在しない。したがって、当該書面に記載された主張が有効になされたとはいえず、裁判所がこれを取り上げて釈明権を行使する必要もないと解される。
結論
原審が弁論再開を認めず、かつ陳述のない主張について釈明権を行使しなかったことに違法はなく、上告は棄却される。
実務上の射程
事件番号: 昭和37(オ)744 / 裁判年月日: 昭和38年4月9日 / 結論: 棄却
弁論の再開を命ずる否とは裁判所の専権事項であり、第一審判決がいわゆる欠席判決である 場合にも、結論を異にすべきものではない。
弁論再開の裁量性を確認する基本判例である。答案上は、弁論終結後の新証拠発見等に伴う再開申立が拒絶された際の違憲・違法を論じる文脈で、原則として裁判所の自由裁量であることを示すために引用する。また、釈明義務の範囲が「弁論に現れた事項」に限定されることを示唆する側面もある。
事件番号: 昭和37(オ)106 / 裁判年月日: 昭和38年6月7日 / 結論: 棄却
一 準備書面の第一審口頭弁論期日における陳述がなされなかつたからといつて、控訴審でこれに記載されている主張をするかどうかを確かめる釈明義務はない。 二 (省略)
事件番号: 昭和32(オ)488 / 裁判年月日: 昭和34年3月12日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】弁論の再開の是非は裁判所の職権に属する事項であり、裁判所の合理的な裁量によって決定される。 第1 事案の概要:上告人は、被上告人が建物の建築を開始する以前から係争地を占有していたと主張したが、原審はこれを認めなかった。上告人は、本人再尋問の却下や、結了した口頭弁論を再開しなかった原審の判断には違法…
事件番号: 昭和34(オ)710 / 裁判年月日: 昭和36年7月11日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】裁判所が釈明権を行使しなかったとしても、他の証拠により事実認定が維持される場合には、判決の結果に影響を及ぼすべき違法があるとはいえない。 第1 事案の概要:上告人は、本件係争地を買い受けたと主張したが、原審は証拠に基づき、上告人が被上告人の先代から土地を賃借したものであると認定した。上告人は、永代…
事件番号: 昭和34(オ)153 / 裁判年月日: 昭和36年10月27日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】上告理由が原審の事実認定や証拠の取捨判断を非難するもの、または原審で主張しなかった事項を前提とするものである場合、これらは採用し得ない。 第1 事案の概要:上告人は、原審の事実認定および法律上の判断、さらには証拠の取捨判断について不服を申し立て、上告理由を構成した。この中には、上告人が原審(控訴審…