所有権取得登記後、右登記されたとおりの所有権の移転が実際に行われた場合には、その時以後右登記は有効であると解すべきである。
所有権移転登記と事後の実体権利関係の合致。
民法177条
判旨
弁済の準備がない状態での言語上の提供は、債権者の受領拒絶の有無にかかわらず無効であり、また、実体的な権利移転前に先行してなされた登記は、その後の権利移転によって実体関係に合致するに至れば有効となる。
問題の所在(論点)
1. 債務者に弁済の準備がない場合、言語上の提供による弁済の効力が認められるか。 2. 実体上の権利移転がないまま先行してなされた登記は、その後に実体関係が具備された場合、有効な登記となるか。
規範
1. 弁済の言語上の提供(民法493条但書)が認められるためには、債権者の受領拒絶がある場合であっても、債務者に弁済の準備が備わっていることを要する。 2. 物権変動の実体がない状態で先行してなされた登記であっても、その後に登記の内容と一致する実体上の権利移転が行われた場合には、その時点から登記は実体関係に合致し、有効な登記として対抗力を有する。
重要事実
上告人甲は、被上告人に対し債務の弁済を主張したが、実際には現金60万円を調達・持参した事実は認められず、弁済の準備をしていた証拠もなかった。また、本件不動産について、代物弁済予約の完結の意思表示がなされる前に所有権移転登記が先行して行われていたが、その後、実際に予約完結の意思表示がなされ、所有権が被上告人に移転する実体上の関係が成立した。
あてはめ
1. 上告人らは言語上の提供を主張するが、判示の通り当時なんらかの程度で弁済の準備があった事実は認められない。したがって、債権者が受領を拒絶していたか否かを問わず、適法な弁済の提供(民法493条)とはいえず、弁済の抗弁は排斥される。 2. 本件登記は代物弁済予約完結の意思表示前になされたものであるが、その後に実際に所有権移転が行われ、登記と実体上の権利関係が合致するに至っている。一度実体関係と合致した以上、先行した瑕疵は治癒され、有効な対抗要件(民法177条)として機能すると解される。
結論
弁済の提供は無効であり、また本件登記は実体関係に合致した時点から有効となるため、被上告人は所有権取得を対抗できる。
実務上の射程
1. 民法493条但書の「口頭の提供」の要件として、主観的な弁済の意思だけでなく、客観的な弁済の準備(資力の確保等)が必要であることを示す。2. 「実体関係に合致しない登記」であっても、事後的に実体が伴えば有効となるという『実体関係への合致による登記の有効化』の法理を明示した重要判例である。
事件番号: 昭和36(オ)675 / 裁判年月日: 昭和36年12月27日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】当事者間に契約の成立を希望する意思の合致があったとしても、直ちに契約が成立したと認めることはできず、確定的に契約の締結に至ったか否かは、当時の実情や動機等の事実関係を総合して判断すべきである。 第1 事案の概要:上告人は、建物の所有者である被上告人に対し、今後半年から2年の間に当該建物を買い受ける…