判旨
判決に影響を及ぼさない理由の不備や事実認定の誤りがあっても、他の認定事実や証拠関係に照らして結論が維持できる場合には、原判決は破棄されない。
問題の所在(論点)
事実認定の根拠となった一部の事実に問題がある場合、直ちに判決を破棄すべき理由となるか。また、交渉の存在が認められる場合に当然に契約の成立が認められるか。
規範
事実認定の過程において一部に不適切な事実の斟酌(しんしゃく)があったとしても、その余の認定事実および挙示された証拠関係を検討し、原判決の結論を維持し得ると判断される場合には、判決に影響を及ぼすべき違法があるとはいえない。
重要事実
上告人は、発電事業譲渡に関する契約が成立したと主張したが、原審は特定の事実(判示(1)から(3))および証人の証言に基づき、契約成立の事実を認めなかった。これに対し上告人は、原審が認定の基礎とした事実(3)が不適切であること等を理由として上告を申し立てた。
あてはめ
仮に原審が認定した事実(3)が斟酌すべきでないものであったとしても、判示された他の事実(1)(2)や証人の証言等の証拠関係を総合すれば、契約成立を否定した原審の結論は正当として維持できる。また、事業譲渡の提案交渉があった事実が認められるからといって、直ちに交渉が妥結し契約が成立したと認めることはできない。
結論
上告人の主張には理由がなく、原判決の結論は維持されるべきであるため、上告を棄却する。
実務上の射程
民事訴訟における事実認定の合理性を争う際の限界を示す。判決の理由の一部に誤りがあっても、結論に影響しない「傍論的誤謬」に留まる場合は上告理由とならないことを確認する実務上重要な判断である。
事件番号: 昭和32(オ)180 / 裁判年月日: 昭和33年7月4日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】上告の理由が原審の事実認定や証拠の取捨選択を非難するものにすぎない場合、原判決に影響を及ぼすことの明らかな法令の違背を主張するものとは認められない。 第1 事案の概要:上告人は、原審が行った証拠の取捨および事実の認定に不服があるとして上告を申し立てた。 第2 問題の所在(論点):事実認定の不当を理…