判旨
強制執行により建物の占有を取得した者が、その直後に占有を侵奪された場合、占有回収の訴え(民法200条1項)によってその回復を求めることができる。
問題の所在(論点)
強制執行によって適法に占有を取得した直後、元の占有者等によってその占有が奪われた場合に、占有回収の訴え(民法200条1項)を認容できるか。
規範
占有回収の訴え(民法200条1項)が認められるためには、(1)占有者がその占有を「奪われた」こと(占有侵奪の事実)、および(2)提訴期間(民法201条3項)等の要件を満たすことが必要である。適法な強制執行により占有を取得した直後にこれを実力で奪い返す行為は、同条にいう占有の侵奪に該当する。
重要事実
被上告人は、昭和28年10月12日、執行力ある和解調書に基づく明渡しの強制執行により、本件三室の占有を取得した。しかし、上告人はその直後、被上告人が取得した当該占有を侵奪した。これに対し、被上告人が占有回収の訴えを提起した事案である。
あてはめ
本件において、被上告人は和解調書に基づく強制執行という適法な手続きを経て本件三室の占有を有効に取得している。これに対し、上告人はその直後に当該占有を実力で排除して自らの支配下に戻しており、これは被上告人の意思に反してその占有を奪う「侵奪」行為に他ならない。したがって、占有回収の訴えの要件である占有侵奪の事実が認められる。
結論
被上告人の占有回収の訴えを認容した原審の判断は正当である。
実務上の射程
強制執行直後の自力救済を否定し、法的手続きにより得られた占有状態を占有訴権により保護することを明示したものである。答案上は、本権の有無にかかわらず占有侵奪の事実のみで訴えが認められる点を確認する基礎的な事例として活用できる。
事件番号: 昭和28(オ)1203 / 裁判年月日: 昭和30年7月19日 / 結論: 棄却
換地予定地に指定されただけでは、当然にはその土地の占有権の変動移転を生ずるものではない。
事件番号: 昭和33(オ)449 / 裁判年月日: 昭和34年1月8日 / 結論: 棄却
転借人を占有代理人として間接占有を有する債借人が占有を奪われたとするには、占有代理人の所持が意思に反して第三者によつて失わしめられた場合でなければならない。
事件番号: 昭和32(オ)346 / 裁判年月日: 昭和36年6月6日 / 結論: 棄却
一 債務者の占有を解き執行吏の保管に付する旨の仮処分執行として、執行吏が目的物件を所持するに至つても、執行債務者が目的物件に対する占有を侵奪されたことにはならない。 二 執行吏が仮処分による保管物件の換価金を執行債権者の還付申請により誤つて執行債権者に交付した場合、執行債務者が換価金に対する占有を侵奪されたことにはなら…