判旨
利息制限法を超える利息の天引がある場合、制限内の利息と現実交付額の合計額で消費貸借が成立する。また、暴利行為による公序良俗違反の判断では、代物弁済目的物の時価と債務額を対比し、借地上の建物については借地権の価格を適切に斟酌すべきである。
問題の所在(論点)
1. 利息制限法を超える利息の天引がある場合、元本額をいかに算定すべきか。2. 代物弁済予約が暴利行為として公序良俗に反するかを判断する際、借地上の建物の価値をどのように評価すべきか。
規範
1. 利息の天引が行われた場合、天引額のうち利息制限法所定の制限内の金額と、実際に交付された金額との合計額を元本として消費貸借契約が成立する。2. 代物弁済予約が公序良俗(民法90条)に反するか否かは、予約当時の目的物の価格と債務額を対比して判断する。その際、目的物が借地上の建物であれば、借地権の価格を全額加算はしないまでも、その事情を斟酌して時価を算定すべきである。
重要事実
債権者と債務者が、元金20万円、利息月5分とする消費貸借契約を締結する際、1か月分の利息1万円を天引きし、19万円を現実に交付した。あわせて、本件債務の担保として、借地権付建物(当時、借地権24万円、建物22万円程度の評価)を目的とする代物弁済予約を締結した。債務者は、利息の天引が利息制限法に抵触すること、および目的物の価格が債務額に比して著しく高額であり公序良俗に反し無効であることを主張した。
あてはめ
1. 本件では1万円が天引されたが、当時の制限最高率による利息は1,666円である。したがって、現実交付額19万円に制限内利息1,666円を加算した19万1,666円を正当な元本債務額と認めるのが相当である。2. 公序良俗違反の検討において、建物の時価は、借地権が債権者に譲渡されるものの地主の承諾が必要である等の不安定な地位を考慮し、借地権価格を一定程度斟酌して35万円と認定した原審の判断は合理的である。3. この時価35万円と上記債務額を対比しても不当な利益とはいえず、債務者の窮状に乗じた事実も認められないため、公序良俗違反とはいえない。
結論
本件消費貸借は元本19万1,666円として有効に成立し、これに対する代物弁済予約も公序良俗に反せず有効である。
事件番号: 昭和34(オ)281 / 裁判年月日: 昭和35年12月27日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】利息制限法所定の制限を超える利息が任意に支払われた場合、その超過部分は債務者から取り戻すことができない。また、公序良俗違反による無効は、無思慮や窮状に乗じた不当な契約であるといった具体的な事情が認められない限り肯定されない。 第1 事案の概要:上告人(債務者)は、被上告人(債権者)から金員を借り受…
実務上の射程
利息制限法下の天引元本の確定手法を示す基本判例である。また、代物弁済予約(のちの譲渡担保等の合意を含む)の暴利行為性を争う際、目的物が借地権付建物である場合の具体的な評価手法として活用できる。ただし、その後の利息制限法改正や仮登記担保法制定により、清算義務の観点からの規律が先行する点に注意を要する。
事件番号: 昭和33(オ)734 / 裁判年月日: 昭和35年6月2日 / 結論: 破棄差戻
金融業者が、金二〇万円を、弁済期一ケ月後、利息一ケ月九分の約で貸し付けるにあたり、借主が右債務の支払を怠つたときは、貸主はその支払にかえて時価八〇万円を下らない不動産の所有権を取得することができる旨代物返済の予約をした場合であつても、貸主が、巨利を博すべくはじめから右不動産を処分する意図をもつて、借主側の窮迫、無経験な…
事件番号: 昭和35(オ)1179 / 裁判年月日: 昭和37年12月4日 / 結論: 棄却
利息制限法の制限をこえる利息を目的として準消費貸借をした場合、該契約は制限をこえる部分について無効である。
事件番号: 昭和29(オ)854 / 裁判年月日: 昭和31年5月25日 / 結論: 棄却
昭和一六年一一月中に締結された代物弁済の予約について、債権者のなした予約完結の意思表示が、右予約成立後、物価の高騰した昭和二二年一〇月中になされた場合であつても、原審認定の事実関係(原判決参照)の下においては、右予約完結の意思表示は信義公平に反するものとは認められない。
事件番号: 昭和44(オ)269 / 裁判年月日: 昭和45年4月21日 / 結論: 棄却
年数回の利息の組入れを約する重利の予約は、毎期における組入れ利息とこれに対する利息との合算額が、本来の元本額に対する関係において、一年につき利息制限法所定の制限利率により計算した額をこえない限度においてのみ有効である。