年数回の利息の組入れを約する重利の予約は、毎期における組入れ利息とこれに対する利息との合算額が、本来の元本額に対する関係において、一年につき利息制限法所定の制限利率により計算した額をこえない限度においてのみ有効である。
年数回の組入れを約する重利の予約と利息制限法
民法405条,利息制限法1条
判旨
金銭消費貸借における年数回の重利の予約は有効であるが、その効力は組入れ利息とこれに対する利息の合算額が本来の元本に対し利息制限法所定の制限利率の範囲内にある場合に限られる。また、利息に関する重利の予約が当然に遅延損害金に及ぶことはなく、遅延損害金については別段の合意がない限り単利計算によるべきである。
問題の所在(論点)
1. 利息制限法の制限利率を超える重利の予約は、どの範囲で有効か。 2. 利息について締結された重利の予約の効力は、当然に遅延損害金にも及ぶか。
規範
1. 重利の予約の有効性:消費貸借において延滞利息を元本に組み入れ利息を生じさせる合意(重利の予約)は、弁済期が1年未満で年数回の組入れがなされる場合も有効である。 2. 効力の限界:ただし、利息制限法及び民法405条の趣旨に鑑み、毎期の組入れ利息とこれに対する利息の合算額が、本来の元本額に対し年換算で利息制限法の制限利率を超えない範囲で効力を有する。 3. 遅延損害金への射程:利息についてなされた重利の予約は、特段の事情がない限り、当然には遅延損害金に及ばない。
重要事実
債権者(上告人)は債務者(被上告人)に対し、計2,140万円(後に増額)を貸し付け、譲渡担保を設定した。その際「2ヶ月ごとの手形満期日に利息の支払がないときは当然に元本に組み入れる」旨の重利の予約を締結した。その後、特約により利率が日歩5銭、さらには日歩8銭へと引き上げられ、利息制限法の制限を超える状態となった。また、弁済期経過後の遅延損害金についても重利の予約が適用されるかが争点となった。
事件番号: 昭和34(オ)281 / 裁判年月日: 昭和35年12月27日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】利息制限法所定の制限を超える利息が任意に支払われた場合、その超過部分は債務者から取り戻すことができない。また、公序良俗違反による無効は、無思慮や窮状に乗じた不当な契約であるといった具体的な事情が認められない限り肯定されない。 第1 事案の概要:上告人(債務者)は、被上告人(債権者)から金員を借り受…
あてはめ
1. 重利の予約について:昭和32年9月以降、約定利率が日歩5銭(年利18.2%超)に改定された結果、2ヶ月ごとの組入れを行うと、組入れ利息とそれに対する利息の合計が、元本に対する関係で直ちに制限利率(本件では15%〜18%)を超える状態となった。したがって、この改定後は重利の予約に従い元本に組み入れる余地はないと評価される。 2. 遅延損害金について:本件において遅延損害金につき個別に重利の約束をした事実は認められない。利息の支払期を定めてなされた重利の約束が当然に遅延損害金に及ぶとする法的根拠はなく、単利計算により算出されるべきである。
結論
1. 制限利率を超える重利の予約は、制限利率の範囲内でのみ効力を有し、本件利率改定後は組入れの余地がない。 2. 遅延損害金については特約がない限り重利の予約の効力は及ばず、単利計算による。
実務上の射程
利息制限法の潜脱を防止する観点から、重利(利子に対する利子)の計算結果も制限利率の枠内に収める必要があることを示した。答案上は、利息制限法1条の適用場面において、単なる利率だけでなく「重利による実質的な利息負担」が制限を超えていないかを検討する際の規範として活用できる。また、利息と遅延損害金の予約を厳格に区別する実務運用を裏付けるものである。
事件番号: 昭和33(オ)714 / 裁判年月日: 昭和35年10月11日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】利息制限法を超える利息の天引がある場合、制限内の利息と現実交付額の合計額で消費貸借が成立する。また、暴利行為による公序良俗違反の判断では、代物弁済目的物の時価と債務額を対比し、借地上の建物については借地権の価格を適切に斟酌すべきである。 第1 事案の概要:債権者と債務者が、元金20万円、利息月5分…
事件番号: 昭和35(オ)1179 / 裁判年月日: 昭和37年12月4日 / 結論: 棄却
利息制限法の制限をこえる利息を目的として準消費貸借をした場合、該契約は制限をこえる部分について無効である。
事件番号: 昭和29(オ)854 / 裁判年月日: 昭和31年5月25日 / 結論: 棄却
昭和一六年一一月中に締結された代物弁済の予約について、債権者のなした予約完結の意思表示が、右予約成立後、物価の高騰した昭和二二年一〇月中になされた場合であつても、原審認定の事実関係(原判決参照)の下においては、右予約完結の意思表示は信義公平に反するものとは認められない。
事件番号: 昭和26(オ)273 / 裁判年月日: 昭和29年2月16日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】契約成立後の事情変更を理由とする契約解除や改訂を認めるには、当事者が予見し得なかった事情の変化が生じ、当初の契約通りの効果を発生させることが著しく信義衡平の原則に反する場合に限られる。本件のように、物価高騰が予見可能であり、かつ債務者が履行を不当に阻害した等の事情がある場合には、事情変更の原則の適…