判旨
当事者が口頭弁論期日に出頭し、または訴訟代理人が控訴申立の趣旨を陳述しても、請求原因事実について何ら具体的な認否を行わず本案の弁論に及ばない場合には、擬制自白(民事訴訟法159条1項・3項)が成立する。
問題の所在(論点)
口頭弁論期日に出頭し、形式的に控訴申立の趣旨を陳述したものの、請求原因事実に対する認否を留保し続けた場合、民事訴訟法159条(擬制自白)の適用を認めることができるか。
規範
当事者が口頭弁論期日に出頭しても、相手方の主張した事実を争うことを明らかにせず、かつ本案の弁論に及ぶ実質的な認否を行わない場合には、当該事実を自白したものとみなす(擬制自白)。これは、訴訟の遅延を防止し、適切な審理を行うための規律である。
重要事実
上告会社(被告・控訴人)の代表者は、第一審の口頭弁論期日に一度も出頭せず、答弁書等の書面も提出しなかった。第二審において、選任された代理人が控訴申立の趣旨(原判決取消等)を陳述したが、その後の数回の期日のうち一部に出頭した際も「次回に答弁事実を明らかにする」と述べるにとどまった。最終的に、請求原因事実に対する具体的な認否や本案の弁論が行われないまま審理が進行した。
あてはめ
上告会社は、二審で代理人が控訴の趣旨を述べ、一部の期日に出頭はしている。しかし、第一審から通じて答弁書を提出せず、二審の期日においても「次回に明らかにする」と述べるだけで、何ら本案の弁論に及んでいない。このように、事実関係について争う姿勢を具体的に示さず、認否を懈怠している状態は、相手方の主張事実を明らかに争わないものと評価せざるを得ない。したがって、請求原因事実を自白したものとみなす原審の判断は正当である。
結論
上告会社の請求原因事実に対する擬制自白を認め、敗訴を言い渡した原審の措置は相当であり、上告は棄却される。
実務上の射程
本判決は、単に出頭しているだけでは足りず、具体的な認否を伴う「本案の弁論」を行わない場合に擬制自白が成立することを確認している。答案上は、第159条の要件検討において、形式的な出頭や陳述があっても実質的な認否を欠く場合に「争うことを明らかにしない」といえるかの判断指標として活用できる。
事件番号: 昭和34(オ)737 / 裁判年月日: 昭和35年3月11日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】旧民事訴訟法138条(現行158条)に基づく準備書面の陳述擬制は、最初になすべき口頭弁論期日に限定される。それ以降の期日に提出された準備書面については、同条を適用して陳述したものとみなすことはできず、当該書面に基づく証拠申出の援用も認められない。 第1 事案の概要:上告人は、訴訟手続において準備書…