和解契約は、その成立に至る過程において第三者があつせん仲介することは、その妨げとなるものではないから、農業委員会のいわゆる調停によつて成立した和解契約は、その農業委員会に右調停をなすべき職務権限があると否とに関係なく、有効である。
農業委員会のいわゆる調停によつて成立した和解契約が有効であるために、農業委員会に右調停をなすべき職務権限があることの要否。
判旨
民法上の和解契約は、当事者が互いに譲歩して紛争を終止させる契約であり、その成立過程において第三者が斡旋仲介したとしても、その有効性を妨げるものではない。また、仲介者が公的機関である場合、その機関に本来的な調停権限があるか否かは、私法上の和解の効力に影響を及ぼさない。
問題の所在(論点)
民法上の和解契約の成立過程において、職務権限のない第三者(本件では農業委員会)が斡旋仲介を行った場合、その和解契約は有効か。
規範
和解(民法695条)は、当事者が互いに譲歩してその間に存する争いをやめることを約することによって成立する。契約の成立過程において、第三者が斡旋仲介を行うことは何ら妨げられない。また、仲介者が行政機関等の第三者である場合、当該機関に法令上の職務権限としての調停権限が認められるか否かにかかわらず、当事者間に私法上の合意が認められる限り、民法上の和解として有効に成立する。
重要事実
本件山林は登記簿上、被告(上告人)の単独名義であったが、実際には昭和初期の買入れ時に原告(被上告人)が代金の半額を拠出しており、実質的には共有状態にあった。この山林をめぐる紛争について、農業委員会の調停が行われ、被告の代理人と原告との間で合意が成立した。被告側は、農業委員会に本件紛争を調停すべき職務権限がないことを理由に、当該合意(和解)の無効を主張して上告した。
あてはめ
本件において、農業委員会の調停を通じて、被告の代理人と原告との間に紛争解決の合意が成立している。和解の本質は当事者の互譲による争いの終止にあり、第三者の介在は形式にすぎない。農業委員会に公法上の調停権限があるか否かは、私法上の契約の効力を左右するものではなく、当事者の代理人が関与して合意に至った以上、民法上の和解としての要件を満たす。したがって、当該合意は私法上の契約として有効に成立していると解される。
結論
農業委員会の調停によって成立した合意は、同委員会に職務権限があるか否かにかかわらず、有効な民法上の和解契約である。したがって、本件上告は棄却される。
実務上の射程
行政機関や権限のない第三者が関与した紛争解決について、公法上の手続としての適法性と、私法上の合意の有効性を切り離して考えるべきことを示した。答案上では、和解の有効性が争われる場面で、仲介者の属性や権限の有無が契約の成否を直ちに左右しないことを論述する際に活用できる。
事件番号: 昭和40(オ)903 / 裁判年月日: 昭和43年8月27日 / 結論: 棄却
選定当事者は、選定者から特別の委任を受けないでも、訴訟上の和解をすることができ、その権限は、選定行為においてもこれを制限することができないものと解すべきである。