詐害行為取消の判決に基づき取消債権者が受益者より自己に価格賠償金の引渡を受けた場合、取消債権者は、右価格賠償金を他の債権者に分配する義務を負うものではない。
詐害行為取消債権者は受益者より引渡を受けた価格賠償金を他の債権者に分配する義務を負うか。
民法424条,民法425条
判旨
詐害行為取消権の行使により価格賠償を受けた債権者は、他の債権者に対して、その賠償金を案分比例により分配すべき義務を負わない。
問題の所在(論点)
詐害行為取消権を行使して価格賠償を受けた債権者は、他の債権者に対し、その受領した金員を債権額に応じて分配すべき法的義務を負うか(民法425条の効力)。
規範
詐害行為取消しの効力は総債権者の利益のために生じ(民法425条)、取り戻された財産等は債務者の一般財産として回復される。しかし、他の債権者が取り戻された物の上に当然に案分比例による現実の権利を取得するものではない。また、価格賠償を受けた取消債権者が、分配の時期や手続に関する法的規定がない中で、自ら分配者となって他の債権者に分配すべき義務を負うと解することはできない。
重要事実
債務者Dの債権者である被上告人は、他の債権者である上告人に対し、Dとの譲渡担保契約が詐害行為に当たるとして取消訴訟を提起した。被上告人は勝訴し、上告人から価格賠償として金員を受領した。これに対し、上告人は、受領された金員は総債権者の利益のために分配されるべきであると主張し、自身の債権額の割合に応じた金額の支払を求めた。
あてはめ
民法425条により、取消しの効力は総債権者の利益のために生じる。したがって、回復された財産は総債権者が平等の割合で弁済を受け得る状態に置かれる。しかし、この「平等の弁済」は、法的な配当手続等がとられた場合において実現されるべき性質のものである。本件において、取消債権者である被上告人は、受領した金員を債務者の一般財産に回復したものとして扱うべき義務はあるが、法律上の分配規定を欠く現状において、被上告人自身が他の債権者のために計算し分配する義務までは認められない。
結論
取消債権者は他の債権者に対して分配義務を負わない。したがって、上告人の請求は失当であり、棄却される。
実務上の射程
取消債権者が事実上の優先弁済を受けることを肯定する実務上の根拠となる。債権法改正後の425条(および改正前判例の趣旨)を踏まえても、現実に価格賠償金を手中に収めた取消債権者に対し、他の債権者が直接の支払を求める法的構成が困難であることを示している。答案上は、総債権者の平等の原則と、具体的な手続規定の欠如という二面性から、取消債権者の事実上の優越的地位を説明する際に用いる。
事件番号: 昭和33(オ)650 / 裁判年月日: 昭和36年8月28日 / 結論: 棄却
和解契約は、その成立に至る過程において第三者があつせん仲介することは、その妨げとなるものではないから、農業委員会のいわゆる調停によつて成立した和解契約は、その農業委員会に右調停をなすべき職務権限があると否とに関係なく、有効である。