農地委員会は、未墾地買収計画を定めたときは、遅滞なくその旨を公告し一定書類を一定期間縦覧に供すれば足り、地主に通知することを要しない。
未墾地買収計画を地主に通知することの要否
自作農創設特別措置法31条4項
判旨
未墾地買収計画の策定に際し、地主への個別通知を規定しない旧自作農創設特別措置法の規定に基づき、通知を欠いたとしても直ちに違法とはならず、また買収計画に一部不備があっても重大明白な瑕疵がない限り無効とはならない。
問題の所在(論点)
未墾地買収計画の策定において、地主への個別通知を欠くことが行政手続上の違法を構成するか。また、買収計画の不備が処分の無効事由(重大明白な瑕疵)にあたるか。
規範
1. 行政庁が処分を行うにあたり、法律が公告・縦覧の手続きを規定している一方で、関係当事者への個別通知を規定していない場合、通知を欠くことは直ちに違法とはならない。2. 行政処分の無効は、その瑕疵が重大かつ明白である場合に限られる。3. 買収令書交付後の法定期間内に出訴が可能であったにもかかわらず、これを行わなかった場合、当該処分の瑕疵を争うことはできない。
重要事実
上告人の所有する未墾地約30町歩について、農地委員会が買収計画を策定した。同法31条4項に基づき公告・縦覧は行われたが、地主である上告人への個別通知は行われなかった。その後、農地委員会が買収計画を「保留する」旨の通知を上告人に行ったが、その時点ですでに買収の効力が発生していた。上告人は、個別通知がなかったことや買収計画の不備を理由に、買収処分の無効を主張して上告した。
事件番号: 昭和28(オ)1266 / 裁判年月日: 昭和33年4月30日 / 結論: 棄却
農地所有権の移転後、移転登記未経由の間に登記簿上の所有名義人を所有者としてなされた農地買収処分は、当然無効と解すべきではない
あてはめ
本件では、旧自作農創設特別措置法31条4項が公告・縦覧のみを規定し、地主への通知を義務付けていない。したがって、通知を欠くことは妥当性を欠くとしても違法ではない。また、買収面積の一部に分散した耕作地が含まれていたとしても、それが「重大明白な違法」とは認められない。さらに、上告人は買収令書の交付を受けた後、同法47条の2に規定された出訴期間内に処分の取消しを求める訴えを提起することが可能であったにもかかわらず、これを怠ったものである。
結論
地主への通知を欠いたとしても違法ではなく、買収計画の瑕疵も重大明白とはいえない。また、出訴期間を経過した処分の効力を争うことはできず、上告は棄却される。
実務上の射程
行政手続における個別通知の要否および「重大明白な瑕疵」の判断基準に関する初期の重要判例。特段の規定がない限り、公告・縦覧をもって適法とする法形式を肯定し、出訴期間徒過後の瑕疵の主張を厳格に制限する実務上の指針となる。
事件番号: 昭和33(オ)5 / 裁判年月日: 昭和36年3月24日 / 結論: 棄却
買収計画の縦覧期間が一日不足していたということだけでは、右計画に基く買収処分は当然無効となるものではない。
事件番号: 昭和26(オ)405 / 裁判年月日: 昭和28年2月20日 / 結論: 棄却
一 自作農創設特別措置法第五条第四号による都道府県知事の指定がない以上、都市計画法第一二条第一項の土地区劃整理施行区域内の農地であつても、これを買収することができる。 二 原判決の確定するところによれば、本件買収計画に対する訴願の裁決書はおそくも昭和二三年一一月二〇日上告人に送付せられ、その後同二四年一月二九日に本件買…
事件番号: 昭和27(オ)597 / 裁判年月日: 昭和33年2月27日 / 結論: 破棄自判
【結論(判旨の要点)】自作農創設特別措置法に基づく農地買収において、登記簿上の所有者を対象とした処分は、真実の所有者と異なる場合であっても、所定の不服申立手続を経て確定した以上、当然無効とはならない。 第1 事案の概要:農地委員会は、登記簿上でD名義となっていた農地につき、Dが不在地主であるとして買収計画を樹立し、昭和…
事件番号: 昭和26(オ)251 / 裁判年月日: 昭和32年4月11日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】既墾地を未墾地と誤認して行った農地買収計画等の行政処分は、その瑕疵が重大かつ明白である場合には当然無効となる。 第1 事案の概要:本件土地は、昭和22年6月の農地買収計画樹立時において、既に開墾が完了していた。具体的には、一方の土地には陸稲が植え付けられ、他方の土地には馬鈴薯や大豆等が蒔き付けられ…