判旨
婚姻予約不履行に基づく慰謝料の額は、事実審の口頭弁論終結時までに生じた一切の事情を考慮して、裁判所の自由な裁量により量定することができる。
問題の所在(論点)
婚姻予約不履行に基づく慰謝料額を算定するにあたり、どの時点までの事情を考慮すべきか、また裁判所にどの程度の裁量が認められるかが問題となる。
規範
婚姻予約不履行(不法行為または債務不履行)に基づく慰謝料の算定においては、損害賠償額算定の基準時を事実審の口頭弁論終結時とする。裁判所は、同時点までに発生した諸般の事情を総合的に斟酌し、その合理的な裁量によって慰謝料額を決定することができる。
重要事実
上告人と被上告人との間には婚姻の予約(婚約)が成立していたが、その後、予約の不履行が生じた。第一審および原審(控訴審)は、当事者間に存する「現在の事情」に基づき、婚姻予約不履行による精神的苦痛を補填するための慰謝料額を算定した。これに対し上告人は、原判決が基準とした事情の考慮の仕方に違法があるとして上告した。
あてはめ
本件において、原判決は判決当時の「現在の事情」に基づき慰謝料額を裁定している。婚姻予約不履行による損害は、単なる財産的損害にとどまらず、精神的苦痛という非財産的損害を含むものである。このような損害の金銭的評価は、口頭弁論終結時までに現れた一切の事実を基礎として判断されるべき性質のものである。したがって、原審が事実審の終結時に至るまでの諸事情を斟酌して額を決定したプロセスに、裁量権の逸脱や法的な誤りは認められない。
結論
婚姻予約不履行に基づく慰謝料額は、事実審の口頭弁論終結時までの諸事情を基礎として裁判所の裁量により決定できる。原判決に違法はなく、上告は棄却される。
実務上の射程
事件番号: 昭和38(オ)334 / 裁判年月日: 昭和38年12月20日 / 結論: 棄却
当事者がいずれも高等学校卒業直後であり、男性においてなお大学に進学して学業を継続しなければならないときに肉体関係を結ぶに至つた場合でも、将来夫婦となることを約して肉体関係を結んだものであり、その後も男性において休暇で帰省するごとに肉体関係を継続し、双方の両親も男性の大学卒業後は婚姻させてもよいとの考えで当事者間の右の関…
本判決は、不法行為や債務不履行一般における慰謝料算定の基準時および裁判所の裁量を認めた実務上の準則を確認するものである。答案作成上は、非財産的損害の算定における基準時を問われた際、「事実審の口頭弁論終結時までの諸事情を総合考慮すべき」とする根拠として活用できる。
事件番号: 昭和33(オ)754 / 裁判年月日: 昭和34年12月24日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】婚姻予約の当事者一方による不当な破棄について、当該当事者の言動のみならず、その親等の第三者がこれに加担して婚姻予約破棄の事実を惹起させた場合には、当該第三者も連帯して損害賠償責任を負う。 第1 事案の概要:上告人Aは被上告人と婚姻の予約をしていたが、後にこれを破棄した。この破棄に際し、上告人Aの言…
事件番号: 昭和35(オ)241 / 裁判年月日: 昭和38年3月26日 / 結論: 棄却
一 原判示の事実関係のもとでは、不法行為が成立するとはみられない。 二 慰藉料額の認定は、原審の裁量に属する事実認定の問題であり、その額が著しく不相当であつて経験則もしくは条理に反するような事情でもないかぎり、その不当をもつて上告理由とはなしえない。
事件番号: 昭和41(オ)819 / 裁判年月日: 昭和41年12月8日 / 結論: 棄却
内縁を不当に破棄された者は相手方に対し不法行為を理由として損害賠償を求めることもできる。