当事者がいずれも高等学校卒業直後であり、男性においてなお大学に進学して学業を継続しなければならないときに肉体関係を結ぶに至つた場合でも、将来夫婦となることを約して肉体関係を結んだものであり、その後も男性において休暇で帰省するごとに肉体関係を継続し、双方の両親も男性の大学卒業後は婚姻させてもよいとの考えで当事者間の右の関係を黙認していたなど判示の事情のもとで、男性が正当の理由がなくて右女性との婚姻を拒絶したときは、右女性は婚姻予約不履行による慰藉料を請求することができる。
婚姻予約不履行による慰藉料の請求が認められた事例
民法第4編親族第2章第1節婚姻の成立,民法415条
判旨
結納の授受や仮祝言等の慣習的儀式を経ていない場合であっても、将来夫婦となることを真面目に約束し、周囲もこれを黙認・期待する客観的状況があれば婚姻予約の成立が認められる。
問題の所在(論点)
婚姻予約の成立要件として、結納や仮祝言等の形式的な儀式を挙行することが不可欠か、あるいは当事者間の合意と実態のみで成立し得るか(民法709条に基づく損害賠償責任の前提)。
規範
婚姻予約は、将来において婚姻を成立させることを目的とする当事者間の合意(契約)である。その成立には、必ずしも結納の取り交わしや仮祝言等の慣習的な儀式を要するものではなく、当事者が誠実に将来の婚姻を約したと認められる事実関係(真実の愛情に基づく合意、継続的な肉体関係、親族・周囲の認識等)があれば足りる。
重要事実
高校卒業後に将来の婚姻を約束して肉体関係を持った男女が、男の大学進学後も頻繁に文通や帰省時の交際を続け、女は他の縁談を断り男に学資まで送金していた。両親も将来の婚姻を承知して黙認し、近隣住民も将来夫婦になるものと認識していた。しかし、男は大学卒業後に別の女性と結婚し、女との婚姻を拒絶した。当事者間に結納や仮祝言等の儀式は行われていなかった。
事件番号: 昭和35(オ)241 / 裁判年月日: 昭和38年3月26日 / 結論: 棄却
一 原判示の事実関係のもとでは、不法行為が成立するとはみられない。 二 慰藉料額の認定は、原審の裁量に属する事実認定の問題であり、その額が著しく不相当であつて経験則もしくは条理に反するような事情でもないかぎり、その不当をもつて上告理由とはなしえない。
あてはめ
本件では、当事者間に将来夫婦となる真面目な合意があり、長年にわたる肉体関係や親密な文通、女による学資の援助が行われていた。また、両親がこれを黙認し、周囲も将来の婚姻を期待していたという客観的事実が認められる。このような強固な信頼関係と婚姻への期待がある以上、結納等の形式的儀式を欠くとしても、真面目な婚姻予約が成立していたといえる。したがって、男による一方的な破棄は不当な予約不履行にあたる。
結論
結納や仮祝言がなくても婚姻予約は成立するため、男は予約不履行による精神的苦痛(慰謝料)を賠償すべき義務を負う。
実務上の射程
婚姻予約の成立を「儀式の有無」という形式ではなく「合意と実態の真実性」という実質で判断した判例である。答案では、結納がない事例での予約成立を論じる際に活用できる。あてはめでは、交際期間、親への紹介、周囲の認識、経済的援助等の具体的事実を総合考慮する判断枠組みとして引用すべきである。
事件番号: 昭和33(オ)754 / 裁判年月日: 昭和34年12月24日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】婚姻予約の当事者一方による不当な破棄について、当該当事者の言動のみならず、その親等の第三者がこれに加担して婚姻予約破棄の事実を惹起させた場合には、当該第三者も連帯して損害賠償責任を負う。 第1 事案の概要:上告人Aは被上告人と婚姻の予約をしていたが、後にこれを破棄した。この破棄に際し、上告人Aの言…
事件番号: 昭和33(オ)286 / 裁判年月日: 昭和33年10月2日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】婚姻予約不履行に基づく慰謝料の額は、事実審の口頭弁論終結時までに生じた一切の事情を考慮して、裁判所の自由な裁量により量定することができる。 第1 事案の概要:上告人と被上告人との間には婚姻の予約(婚約)が成立していたが、その後、予約の不履行が生じた。第一審および原審(控訴審)は、当事者間に存する「…
事件番号: 昭和41(オ)819 / 裁判年月日: 昭和41年12月8日 / 結論: 棄却
内縁を不当に破棄された者は相手方に対し不法行為を理由として損害賠償を求めることもできる。