指定された判決言渡期日の前日に裁判官忌避の申立があつたので、訴訟手続が停止され、忌避申立却下の裁判確定後に判決言渡がなされた事件において、右訴訟手続停止期間中に忌避を申し立てられた裁判官が他に転補されたからといつて、特別の事情の認められないかぎり、右判決は忌避申立前に評議ならびに原本の署名を了えていたものとを認められるから、適法な判決成立が不可能だとはいえない。
裁判官忌避申立と判決成立の先後
民訴法395条1項1号,民訴法42条
判旨
弁論に関与した裁判官が判決言渡し前に転補された場合であっても、特段の事情がない限り、当該裁判官らが弁論終結後に評議を終え、判決原本に署名捺印を完了していれば、その判決は適法である。
問題の所在(論点)
弁論に関与した裁判官が、判決言渡し前の訴訟手続停止期間中に転補された場合、当該判決は「判決に関与しなかった裁判官が判決をした場合」(民事訴訟法第312条第2項第1号、現行法準用)に該当し、違法となるか。
規範
民事訴訟法上の直接主義の原則から、判決は弁論に関与した裁判官が行わなければならないが、弁論終結後に裁判官が異動した場合であっても、当該裁判官らが退官・転補前に評議を完了し、かつ判決原本に署名捺印を終えていたのであれば、その後の言渡し手続に当該裁判官が関与できなくとも、判決の成立過程に違法はないものと解する。
重要事実
原審において昭和32年2月19日に弁論を終結し、言渡期日を同年3月12日と指定したが、前日の3月11日に裁判官忌避の申立てがなされたため、訴訟手続が停止した。その後、忌避却下決定を経て同年12月17日に判決が言い渡されたが、その間に弁論に関与した裁判官3名のうち2名が、同年6月20日および11月15日にそれぞれ他へ転補されていた。上告人は、異動した裁判官らが適法に評議したものとは認められず、判決に違法があると主張した。
事件番号: 昭和35(オ)236 / 裁判年月日: 昭和35年7月7日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】控訴審の第1回口頭弁論期日に一方の当事者が欠席した場合でも、裁判所は出頭した当事者に第1審の弁論結果を陳述させた上で、第1審判決を引用して判決を言い渡すことができる。 第1 事案の概要:控訴審の第1回口頭弁論期日において、当事者の一方(上告人)が出頭しなかった。裁判所は、出頭した相手方当事者に第1…
あてはめ
本件において、弁論に関与した3名の裁判官は、忌避申立てによる訴訟手続停止(3月12日)以前に弁論を終結している。他に特段の事情が認められない限り、これらの裁判官は忌避申立てがなされる前、すなわち自らが職務を行っていた期間内に、既に評議を終え、判決原本への署名を完了していたものと推認するのが相当である。したがって、その後に裁判官が転補されたとしても、判決の基礎となる判断自体は弁論に関与した裁判官によって適法になされており、言渡し時点で在職していないことは判決の効力を左右しない。
結論
原判決には評議の不備等の違法は認められず、転補された裁判官による判断を含む判決は適法であるため、上告を棄却する。
実務上の射程
判決原本が作成された後の裁判官の異動は、判決の成立を妨げないという実務上の運用を肯定したものである。答案上は、直接主義(民訴法249条1項)の例外的な処理として、評議と署名が完了している事実があれば、言渡し時の裁判官の同一性までは不要とする根拠として活用できる。
事件番号: 昭和32(オ)899 / 裁判年月日: 昭和33年5月16日 / 結論: 棄却
民訴第六三条により裁判所書記官がなす交付送達およびその送達証書の作成は、事実上補助機関たる雇を用いてこれをしても妨げない
事件番号: 昭和33(オ)258 / 裁判年月日: 昭和35年2月9日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】原審が行った証拠の取捨選択および事実認定が適法である限り、上告審においてこれと異なる事実を主張して原判決を非難することは、上告理由にならない。 第1 事案の概要:上告人らは、原審が認定した売買の事実について、証拠の取捨選択や事実認定に誤りがあるとして、原判決の違法を主張し、上告を申し立てた。なお、…
事件番号: 昭和33(オ)71 / 裁判年月日: 昭和35年3月15日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】債務者が債権証書を保持していない場合であっても、他の証拠を総合して弁済の事実を認定できるのであれば、特段の違法はない。また、特定の事実が存在しても、当然に占有者が「所有の意思」を有していると認定されるわけではない。 第1 事案の概要:本件において、上告人は債務が既に弁済されていると主張したが、債権…
事件番号: 昭和36(オ)366 / 裁判年月日: 昭和38年10月15日 / 結論: 棄却
判決言渡前に関与裁判官の転補があつても、右転補以前に評議が成立していたと認められるかぎり、判決成立過程にかしはない。