判旨
建物の譲受人が賃貸借終了後の所有権に基づき明渡しを求める場合、賃貸借が前所有者による解約申入れにより有効に終了したか否かは、前所有者において正当事由が具備されていたか否かにより決すべきである。
問題の所在(論点)
賃貸借契約の継続中に前所有者が解約申入れを行い、その解約期間満了後に建物を譲り受けた者が所有権に基づき明渡しを請求する場合、解約申入れの正当事由の有無は誰を基準に判断すべきか。また、裁判所は占有権原について釈明権を行使すべきか。
規範
賃貸借契約が解約申入れによって有効に解除されたか否かの争点(借地借家法28条参照)において、賃貸借契約の消滅後に当該建物を買い受けた新所有者が明渡しを求める場合には、解約申入れを行った前所有者自身について「正当な事由」が具備されていたか否かを基準に審理判断すべきである。
重要事実
本件家屋の賃貸人Dは、昭和30年6月に自己の店舗改造のための一時移転を正当事由として、賃借人(被上告人)に対し解約申入れを行った。その後、昭和31年2月に原告(上告人)がDから本件家屋を買い受け、所有権を取得した。原告は、Dの解約申入れにより賃貸借は既に終了していると主張し、所有権に基づき建物の明渡しを求めた。原審は、解約申入れの有効性について十分な審理を行わずに原告の請求を判断した。
あてはめ
原告の主張によれば、本件賃貸借は前所有者Dの解約申入れにより、原告が所有権を取得する前に既に解除・消滅している。この場合、当該解約申入れが有効か否かは、申入れ時点におけるD自身の事情に照らして正当事由があるか否かにより決まる。裁判所は、被告がいかなる権原に基づき占有しているかを釈明させた上で、解約申入れの当否(Dにおける正当事由の有無)を審理判断すべきであったが、原審はこれを怠り、原告の主張を誤解したまま判断を下している。
結論
前所有者による解約申入れの正当事由の有無を審理せず、原告の請求を棄却した原判決には審理不尽・理由不備がある。したがって、原判決を破棄し、差し戻すべきである。
実務上の射程
本判決は、賃貸借終了後に物件を取得した譲受人が明渡しを求める事案において、正当事由の判断基準時は「解約申入れ時」であり、判断対象者は「申入れを行った当時の賃貸人」であることを示唆する。司法試験においては、賃貸人交代後の正当事由の承継や判断基準の論点(借地借家法28条)において、本件のように「終了後譲渡」の場合と「存続中譲渡」の場合を区別して論じる際の基礎となる。
事件番号: 昭和33(オ)123 / 裁判年月日: 昭和33年9月11日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】本件は、家屋の所有権帰属が争点となった事案において、原審の証拠取捨および事実認定に違憲や違法な点はなく、当該家屋が上告人ではなく被上告人の所有に属するとした判断を維持したものである。 第1 事案の概要:本件家屋の所有権の帰属をめぐり、上告人と被上告人が争った。第一審・控訴審において、証拠(D証人の…