判旨
複数の者が共同して商行為となるべき事業を経営する組合関係にある場合、その事業のために生じた債務について、各組合員は商法511条1項に基づき連帯して責任を負う。
問題の所在(論点)
数人が共同して商行為となるべき事業を営む組合(民法667条1項)において、その事業のために生じた債務につき、各組合員が商法511条1項に基づき連帯責任を負うか。民法675条の適用範囲と商法511条1項の関係が問題となる。
規範
数人の者がその一人又は全員のため商行為となるべき行為をしたときは、その行為によって生じた債務は各自が連帯して負担する(商法511条1項)。共同で商号を用いて特定の事業を経営する組合員間の関係において、当該事業のために生じた債務は、同項にいう「その一人又は全員のため商行為となるべき行為」によって生じたものと解され、全組合員が連帯債務を負うものと解するのが相当である。
重要事実
上告人は第一審相被告Dと共同し、「E窯業所」という商号の下で製陶業(営業的商行為)を経営していた。この共同事業の遂行にあたり、上告人らは被上告人から燃料としての亜炭を買い受けた。昭和30年3月31日時点で、当該売掛代金の残額は11万1140円に達していたが、支払いが滞ったため、被上告人が上告人らに対し代金の支払いを求めて提訴した。
あてはめ
本件において、上告人とDは共同で製陶業を経営しており、その実態は民法上の組合に該当すると認められる。この共同事業のために被上告人から亜炭を買い入れた行為は、上告人ら全員のために行われた商行為であるといえる。したがって、民法675条が定める分割債務原則の例外として、商法511条1項が優先的に適用される結果、上告人は当該売掛代金債権について連帯債務者としての責任を免れないと評価される。
結論
上告人は、共同事業者として商法511条1項に基づき、本件売掛代金の全額について連帯して支払う義務を負う。
実務上の射程
商行為となる事業を営む組合(商事組合)における対外債務の責任関係を確定した判例である。答案上では、組合債務の原則(民法675条:分割責任)を指摘した上で、商法511条1項の適用により連帯責任が導かれる論理構成として用いる。共同経営の実態がある場合には、商法の連帯原則が優先することを簡潔に論述する際に有用である。
事件番号: 昭和33(オ)743 / 裁判年月日: 昭和37年5月18日 / 結論: 破棄差戻
売主が商人であるとしても、単にそれだけで取引の相手方のためにも商行為が成立し、商法第五一一条第一項が買主側に適用されるとはかぎらない。