判旨
所得税更正決定における所得金額の認定の誤りは、特段の事情がない限り、行政行為の内容上の誤りにすぎず、当然無効を基礎付ける重大かつ明白な瑕疵とはいえない。
問題の所在(論点)
行政行為である所得税更正決定において、所得認定の誤りがある場合に、それが「重大かつ明白な瑕疵」として処分の当然無効を基礎付けるか。
規範
行政処分が当然無効といえるためには、当該処分に重大かつ明白な瑕疵が存在することを要する。内容上の過誤については、それが客観的に一見して明白であり、かつ瑕疵が重大なものでない限り、当然無効とは認められない。
重要事実
上告人は、税務署長が行った所得税の更正決定について、所得金額の認定に誤りがあるとして、当該更正決定の無効確認を求めて出訴した。
あてはめ
本件における所得金額の認定誤りは、結局のところ所得の認定を誤っているという内容上の過誤に帰するものである。このような所得金額の誤認は、行政行為の成立過程や形式に致命的な不備がある場合とは異なり、直ちに明白な過誤であるとはいえず、また瑕疵の程度が当然無効を導くほど重大であるとも認められない。
結論
本件更正決定に当然無効をもたらす瑕疵があるとはいえず、無効確認の請求は棄却されるべきである。
実務上の射程
行政処分の公定力を否定し無効を主張する場合の一般的基準(重大明白説)を、所得税更正決定という具体的場面に適用したものである。答案上は、認定の誤り程度の瑕疵では取消事由にとどまり、当然無効とはならないことを論証する際の根拠として用いる。
事件番号: 昭和37(オ)790 / 裁判年月日: 昭和39年2月18日 / 結論: 破棄自判
無申告加算税を課徴すべき場合に、過少申告加算税を課しても、その課税処分を無効とはいえない。
事件番号: 昭和38(オ)499 / 裁判年月日: 昭和39年10月22日 / 結論: 棄却
所得税確定申告書の記載内容についての錯誤の主張は、その錯誤が客観的に明白かつ重大であつて、所得税法の定めた過誤是正以外の方法による是正を許さないとすれば納税義務者の利益を著しく害すると認められる特段の事情がある場合でなければ、許されないものと解すべきである。
事件番号: 昭和37(オ)1259 / 裁判年月日: 昭和38年10月1日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】課税処分における所得金額の推計に関し、被上告人が採用した所得標準率の作成方法が適正である限り、これを用いて農業所得を算出することは、推計の手法として不相当とはいえず適法である。 第1 事案の概要:上告人は農業所得等の金額算出において、被上告人が採用した所得標準率に不服を申し立てた。具体的には、麦の…
事件番号: 昭和36(オ)502 / 裁判年月日: 昭和37年2月23日 / 結論: 棄却
所得税法第四二条第三項にいう源泉徴収義務者でない者に対してなされた源泉徴収所得税徴収決定は、同法条の解釈適用をあやまつた違法があるに過ぎないものであるから、裁判所が右の処分は憲法第三〇条、第八四条に違反すると認定したことは、違憲の判断の必要のない事項についてなされた無用な判断というべきである。
事件番号: 昭和35(オ)49 / 裁判年月日: 昭和35年12月22日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】他名義の預金の存在や、所得率が著しく低いこと等は、所得税法上の青色申告承認の取消事由に該当し、当該取消処分は適法である。 第1 事案の概要:上告人は青色申告の承認を受けていたが、税務署長(被上告人)は、DおよびEという他人の名義を用いた別途預金が存在していること、および所得率が実態に比して著しく過…