無申告加算税を課徴すべき場合に、過少申告加算税を課しても、その課税処分を無効とはいえない。
無申告加算税を課徴すべき場合にした過少申告加算税課税処分の効力。
所得税法(昭和37年4月法律第67号による改正前のもの)56条
判旨
本来は無申告加算税を課すべき事案において過少申告加算税を課した処分の瑕疵は、相手方が受ける不利益の程度等を考慮すれば、重大な瑕疵とはいえず無効ではない。
問題の所在(論点)
本来無申告加算税を課すべき場合に過少申告加算税を課した処分の瑕疵は、当該処分を無効とすべき「重大な瑕疵」に該当するか。
規範
行政処分の無効原因となる瑕疵が重大であるか否かは、当該処分の根拠法規の趣旨・目的のみならず、処分の相手方の受ける不利益の程度をも総合的に考慮して判断すべきである。また、加算税の課徴は納税義務者の申告義務違背に対する不利益処分としての性質を有するが、無申告と過少申告は共に申告義務違背である点において本質的な差異はない。
重要事実
納税者である被上告人は、昭和26年分の所得税について確定申告を行わなかった。これに対し、税務署長(上告人)は、本来であればより高額な無申告加算税を課すべきところ、誤って過少申告加算税を課す処分を行った。被上告人は、本件処分は構成要件を欠く重大かつ明白な瑕疵があるとして、その無効確認を求めて提訴した。
事件番号: 昭和32(オ)859 / 裁判年月日: 昭和33年6月14日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】所得税更正決定における所得金額の認定の誤りは、特段の事情がない限り、行政行為の内容上の誤りにすぎず、当然無効を基礎付ける重大かつ明白な瑕疵とはいえない。 第1 事案の概要:上告人は、税務署長が行った所得税の更正決定について、所得金額の認定に誤りがあるとして、当該更正決定の無効確認を求めて出訴した。…
あてはめ
本件において、被上告人は確定申告を行っておらず、法律上は無申告加算税を課されるべき立場にあった。一般に無申告加算税は過少申告加算税よりも多額であるため、より低額な過少申告加算税を課されたことによって被上告人が受ける不利益は、本来受けるべき不利益よりも軽減されている。無申告と過少申告は、いずれも申告義務違背という点において共通しており、処分の本質に変わりはない。したがって、相手方の不利益の程度を考慮すれば、本件の誤りは重大な瑕疵とはいえない。
結論
本件過少申告加算税課税処分に重大な瑕疵があるとはいえず、当該処分は無効ではない。被上告人の請求は棄却されるべきである。
実務上の射程
行政処分の無効判断において、法形式的な要件欠缺だけでなく、実質的な不利益の程度を相関的に考慮する判断枠組みを示した。税務行政における加算税の種類誤りという限定的な場面だけでなく、無効事由としての「重大性」を検討する際の一般的な考慮要素として活用できる。
事件番号: 昭和38(オ)835 / 裁判年月日: 昭和40年2月5日 / 結論: 棄却
所得税の確定申告書を提出すべき義務ある者が申告書を提出しなかつた場合においては、税務署長が、無申告による決定をなすべきであるのに、誤つて過少申告による更正処分をしても、右更生処分の取消を求める訴の利益は認められない。
事件番号: 昭和35(オ)727 / 裁判年月日: 昭和37年3月16日 / 結論: 棄却
所得税法第四四条第四項は所得に関する金額のみならず、何人の所得であるかをも決定できる旨規定したものである。
事件番号: 昭和51(行ツ)98 / 裁判年月日: 昭和57年2月23日 / 結論: 棄却
青色申告書による法人税の確定申告につき青色申告承認の取消処分後に法人税法(昭和四三年法律第二二号による改正前のもの)五七条の規定による繰越欠損金の損金算入を否認して更正処分がされ、次いで青色申告承認の取消処分が取り消された場合、被処分者は、国税通則法二三条二項の規定により減額更正の請求をすべきであつて、右更正処分の無効…
事件番号: 昭和36(オ)502 / 裁判年月日: 昭和37年2月23日 / 結論: 棄却
所得税法第四二条第三項にいう源泉徴収義務者でない者に対してなされた源泉徴収所得税徴収決定は、同法条の解釈適用をあやまつた違法があるに過ぎないものであるから、裁判所が右の処分は憲法第三〇条、第八四条に違反すると認定したことは、違憲の判断の必要のない事項についてなされた無用な判断というべきである。