判旨
手形作成者が交付前に一部の記載(「立会人」の文字等)を抹消することは有効であり、その余の署名捺印の性質は、実質的な記載の趣旨に基づき判断される。
問題の所在(論点)
手形交付前に作成者が行った一部記載の抹消が有効か、また、抹消後に残された署名捺印の法的性質(手形保証の成否)をいかに解すべきか。
規範
手形作成者は、手形を交付して流通に置く前であれば、手形上に記載した事項を任意に抹消することができる。この場合、一部の抹消がなされたとしても、それが当然に手形記載面全体の抹消を意味するものではなく、抹消されずに残った部分については、その記載の客観的趣旨に従った効力が認められる。
重要事実
本件手形には、当初「立会人」との記載があったが、手形の作成者によって交付前に当該記載が抹消された。上告人らの署名捺印は手形上に残されていたが、上告人らは自分たちが単なる「立会人」に過ぎないと主張して、手形上の責任を争った。
あてはめ
本件では、手形作成者が交付前に「立会人」という文言を抹消しており、この一部抹消は有効である。上告人らの署名捺印自体は抹消されずに残っており、原審の認定によれば、これは単なる立会人としてではなく「手形保証」の趣旨で代署代印されたものである。したがって、一部抹消が無効であるとか、手形面全体の抹消を意味すると解すべき特段の事情はない。
結論
手形作成者による交付前の一部抹消は有効であり、残された署名捺印が手形保証の趣旨でなされた以上、上告人らは手形保証人としての責任を負う。
実務上の射程
手形の完成前(交付前)における記載事項の訂正・抹消に関する作成者の権限を認めた事例。答案上は、手形行為の成立時期や記載事項の解釈が問題となる場面で、交付前の修正が有効であることの根拠として利用できる。
事件番号: 昭和32(オ)300 / 裁判年月日: 昭和34年6月12日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】手形上の裏書が口頭弁論終結時までに適法に抹消された場合には、当該裏書は存在しないものとみなされるため、裏書不連続の抗弁は理由を欠くこととなる。 第1 事案の概要:振出人である上告人に対し、受取人である被上告会社が手形金の支払を求めた。本件各手形には、被上告会社から訴外D、訴外Dから訴外E銀行、訴外…