判旨
金銭消費貸借契約の成立について、本証である原告の証拠が被告の反証により真偽不明となった場合、立証責任を負う原告の請求は排斥される。
問題の所在(論点)
金銭消費貸借契約の成立という要件事実について立証責任はどちらが負うか。また、本証と反証の結果、裁判所が当該事実の確信を得られなかった場合の法的帰結はどうあるべきか。
規範
要物契約である金銭消費貸借契約(民法587条)の成立については、契約の合意と金銭の授受を主張する側が立証責任を負う。本証に対し相手方が反証を提出した場合、裁判所が双方の証拠を審究した結果、主要事実の存否が真偽不明(ノン・リケット)の状態に至ったときは、立証責任を負う側の当事者は当該事実を前提とする請求が認められないという不利益を被る。
重要事実
上告人(原告)は、被上告人(被告)に対して金銭の貸付けを行ったと主張し、貸借成立を理由に金銭の支払いを求めて提訴した。原審において、上告人は貸借成立の事実を立証するための証拠を提出したが、被上告人側からもこれに反する反証がなされた。原審は、上告人の提出した証拠を検討した結果、反証等に照らしてこれを措信できないと判断し、請求を排斥した。
あてはめ
本件貸借成立の事実は上告人が主張する請求の基礎となる要件事実であるから、上告人が立証責任を負う。原審は、上告人が提出した本証と相手方から提出された反証をあわせて審究しており、その結果として上告人の主張事実が「措信し難い」と判断している。これは、証拠調べの結果として事実の存否が証明されない状態にあることを意味する。したがって、立証責任の分配原則に従い、上告人は貸借成立という有利な法的効果を享受できず、その請求は棄却を免れないといえる。
結論
本件貸借成立の事実に立証責任を負う上告人の本証が、反証の結果として措信し難い(真偽不明)となった以上、請求を排斥した原審の判断は正当である。
実務上の射程
立証責任(客観的証明責任)の所在と、真偽不明時の裁判の在り方を示す基本的な判例である。答案上は、金銭消費貸借等の要件事実が証明されなかった場合に、立証責任の分配(自己に有利な法律効果を発生させる事実を主張立証すべき責任)に言及しつつ、請求棄却の結論を導く際の根拠として用いる。
事件番号: 昭和33(オ)267 / 裁判年月日: 昭和36年10月6日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】裁判上の自白を撤回するには、自白が真実に反し、かつ、錯誤に基づくことが必要であるが、自白が真実に反することの証明があるときは、特段の事情のない限り、錯誤に基づくものと推定される。 第1 事案の概要:被上告人は、第一審の口頭弁論期日において、法律に疎い素人本人として不利な事実の自白を行った。その後、…