判旨
不動産の所有権移転登記および抵当権設定登記が本人の承諾に基づいてなされた場合には、当該登記は有効であり、意思に基づかない無効な登記であると主張することはできない。
問題の所在(論点)
登記名義人の承諾の下になされた所有権移転および抵当権設定登記について、後から「意思に基づかない登記である」としてその無効を主張できるか(登記の有効性)。
規範
不動産に関する物権変動の登記が、真実の権利関係と一致し、かつ登記名義人の承諾(意思)に基づいてなされている場合には、その登記は有効なものとして取り扱われる。
重要事実
上告人は、本件不動産についてなされた所有権移転登記および抵当権設定登記が自らの意思に基づかない無効なものであると主張して争った。しかし、原審の認定によれば、上告人はこれらの登記およびその前提となる物権変動について承諾を与えていた。また、本件では重複保存登記の問題も付随していたが、原審は前記承諾の事実を覆す事情にはならないと判断した。
あてはめ
本件において、上告人は当該不動産の所有権移転および抵当権設定、ならびにそれぞれの登記について承諾を与えていた。承諾がある以上、登記は上告人の意思に基づくものといえる。したがって、経験則違背等の違法があるとする上告人の主張は、原審の正当な証拠取捨および事実認定を争うものにすぎず、登記を無効とする法的根拠を欠く。
結論
本件各登記は上告人の承諾に基づく有効なものであり、上告人の請求は認められない。
実務上の射程
本判決は、登記の有効性を判断する上で「本人の承諾」という事実認定が決定的な役割を果たすことを示している。司法試験においては、民法94条2項類推適用等の文脈で「登記保持の承諾」や「自発的な登記申請への関与」を認定する際の基礎的な論理として用いることができる。
事件番号: 昭和30(オ)632 / 裁判年月日: 昭和33年5月9日 / 結論: 棄却
被担保債権である現存の債権および将来成立すべき条件付債権を、現存の貸金債権と表示してなされた抵当権設定登記であつても、当事者が真実その設定した抵当権を登記する意思で登記手続を終えた以上、これを当然に無効のものと解すべきではない
事件番号: 昭和40(オ)656 / 裁判年月日: 昭和41年11月10日 / 結論: 棄却
一審判決の送達が不適法であつても、控訴審において異議なく訴訟を遂行してきた以上、適法な上告理由とならない。
事件番号: 昭和33(オ)767 / 裁判年月日: 昭和35年4月14日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】不動産登記手続において、代理人が本人及び相手方の双方を代理する場合であっても、それが既に成立している法律関係に基づく登記義務の履行であるときは、民法108条本文の禁止する双方代理には当たらない。 第1 事案の概要:上告人と被上告人の間の不動産取引に関連し、特定の書面(丙第2号証)が上告人の意思に基…
事件番号: 昭和32(オ)20 / 裁判年月日: 昭和34年7月14日 / 結論: 棄却
登記申請が登記義務者の意思に基いてなされたものであり、よつてなされた登記が実体的権利関係に合致するときは、たとえ右申請の際に添付された印鑑証明書の日附が変造されたものであつても、なお、登記の効力を妨げないというべきである。
事件番号: 昭和33(オ)79 / 裁判年月日: 昭和35年8月12日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】本人が代理人に対して特定の法律行為(本件では不動産の売買契約)を行うための権限を授与していた場合には、当該代理人が本人の名において行った行為の効果は本人に帰属する。 第1 事案の概要:本件において、上告人の代理人であるDは、被上告人である宮城県との間で、上告人が所有する本件建物を売り渡す旨の売買契…