判旨
借地法に基づく賃借の申出において、土地全部でなければ賃借しないとの趣旨を含むような申出は、同法所定の賃借の申出とは認められない。
問題の所在(論点)
借地法に基づき土地の賃借を申し出る際、「全部でなければ賃借しない」との条件を付した申出が、同法所定の賃借の申出として有効に認められるか。
規範
借地法(旧法)に基づく賃借の申出が適法なものとして認められるためには、当該法条の趣旨に則った正当な範囲での申出である必要があり、その範囲を逸脱し、土地全部の賃借を条件とするような排他的な申出は、同法上の賃借の申出には当たらない。
重要事実
上告人らの先代は、本件土地の賃借を申し出るに際し、土地の全部でなければ賃借しないという趣意を含めた賃借の申出を行った。これに対し、被上告人側は使用目的の変更を許容したり賃貸借の継続を承認したりした事実はなく、単に上告人先代の懇望により立退きを猶予していたに過ぎなかった。
あてはめ
上告人ら先代の申出は、単なる賃借の希望にとどまらず、土地全部の賃借を強硬に求めるものであった。このような申出は、借地法が予定する合理的な範囲での利用調整の枠組みを超えたものといえる。したがって、客観的にみて同法に基づく適法な賃借の申出としての実質を欠いていると評価される。
結論
土地全部でなければ賃借しないとの趣旨を含む申出は、借地法所定の賃借の申出とは認められない。
実務上の射程
借地法上の権利主張における「申出」の具体的内容を画する際の参考となる。形式的に申出があれば足りるのではなく、その内容が法の趣旨に照らして妥当な範囲内にあることが求められる。答案上は、権利行使の態様が信義則や法目的に反する場合の否定根拠として活用し得る。
事件番号: 昭和33(オ)972 / 裁判年月日: 昭和37年1月19日 / 結論: 棄却
原審認定の事実関係のもとでは、建物賃貸借契約の解除権行使をもつて権利濫用ということはできない。