第一審において全部勝訴の判決を得た原告も、控訴審において、附帯控訴の方式により請求の拡張をなし得るものと解すべきである。
全部勝訴の原告は控訴審において附帯控訴の方式により請求の拡張をなし得るか
民訴法232条,民訴法378条,民訴法372条
判旨
借地法9条(現借地借家法25条)にいう「一時使用のために借地権を設定したことが明らかな場合」に該当するか否かは、賃貸借成立の動機、契約内容、土地の位置および周囲の環境等の諸事情を総合して判断すべきである。また、第一審で全部勝訴した原告であっても、相手方の控訴に対し、附帯控訴の方式により請求の拡張をすることができる。
問題の所在(論点)
1. 借地法9条(現借地借家法25条)の「一時使用のための借地権」にあたるか否かの判断基準。 2. 第一審で全部勝訴した当事者が、控訴審において附帯控訴により請求を拡張することの可否。
規範
借地法9条(現借地借家法25条)の「一時使用」該当性は、客観的・外形的な契約期間の短さだけでなく、賃貸借成立に至る動機、契約の内容(権利金の有無や建物の種類等)、土地の所在場所および周囲の環境等の諸事情を総合考慮し、将来短期間で契約を終了させる実質的な根拠や客観的事情が認められるかによって判断する。この場合、更新拒絶に関する正当事由等の規定は適用されない。
重要事実
賃貸人(被上告人)は、所有する土地を含む一、一〇七・四坪の土地をビル建築用敷地として自ら使用する具体的な計画を有していた。そのため、当該土地を長期にわたって他人に賃貸できない事情があった。このような状況下で、賃借人(上告人)との間で本件土地賃貸借契約が締結された。その後、賃貸人は賃借人に対し、期間満了を理由に土地明渡しと損害金の支払いを求めて提訴した。第一審で全部勝訴した賃貸人は、賃借人の控訴を受け、原審において附帯控訴の方式により請求の拡張を行った。
あてはめ
1. 本件土地賃貸借について、賃貸人にはビル建築計画という具体的な自用予定があり、長期賃貸が不可能な事情が存在した。契約成立の動機や内容、土地の位置・環境を総合すれば、短期間で終了させるべき客観的事情が明白であり、一時使用目的が認められる。よって借地法の更新規定等は適用されず、期間満了により契約は終了する。 2. 全部勝訴した原告であっても、被告の控訴により事件が控訴審に係属した以上、附帯控訴の方式で請求拡張を行うことは実質的に附帯控訴の性質を有し、民事訴訟法の規定に反せず適法である。
結論
1. 本件賃貸借は一時使用のための設定であると認められ、期間満了により終了する。 2. 第一審全部勝訴者による控訴審での請求拡張は適法である。
実務上の射程
借地借家法25条の「一時使用」の該当性判断において、単なる期間の定めだけでなく、土地利用の具体的必要性や周囲の状況等の諸事情を総合考慮する実務上の枠組みを示したものである。また、控訴審における原告の請求拡張の手法として附帯控訴が利用可能であることを認めた民事訴訟法上の重要判例でもある。
事件番号: 昭和30(オ)855 / 裁判年月日: 昭和32年3月15日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】借地法9条(現借地借家法25条)の「一時使用のために借地権を設定したことが明らかである場合」に該当するか否かは、建物の構造のみならず、賃貸借の期間、目的、土地返還時の建物無償譲渡の約定等、諸般の事情を総合して判断すべきである。また、建物無償譲渡の約定は賃借権設定の対価の一部としての性質を有し、独立…
事件番号: 昭和31(オ)952 / 裁判年月日: 昭和32年12月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】借地借家法の適用を排除する「一時使用目的の借地権」に該当するか否かは、契約期間の長短のみならず、土地の性格、賃貸借の目的、更新の経緯等の諸事情を総合して判断すべきである。 第1 事案の概要:上告人Aは、鉄道用地(本件土地)を1年の約定で賃借した。期間経過後も継続使用を希望したため、被上告人は急ぎの…
事件番号: 昭和40(オ)551 / 裁判年月日: 昭和42年3月16日 / 結論: 棄却
神社の境内地を終戦直後に区画整理施行日までを期限としてマーケツト建設のため賃貸した場合には、権利金代りの寄付をうけ、中途賃料の増額が行われたとしても借地法第九条にいう「一時使用ノ為借地権ヲ設定シタルコト明ナル場合」にあたる。