判旨
立候補届出書が要式行為であっても、その記載事項に瑕疵がある場合に、本人の意思に基づき係官が補充記入したときは、当該瑕疵は治癒され有効な届出となる。
問題の所在(論点)
要式行為とされる立候補届出書において、記載事項の欠落という形式的瑕疵がある場合、事後の補充記入によってその瑕疵が治癒され、届出が有効となり得るか。
規範
立候補届出のような行政上の要式行為において、届出書の記載事項に形式的な不備が存在する場合であっても、当該事項が届出人の真正な意思に基づき、かつ公的機関(係官等)の関与によって適正に補充・修正されたのであれば、特段の事情がない限り、手続上の瑕疵は治癒され、当該届出は有効なものとして取り扱われる。
重要事実
上告人は、本件選挙における立候補届出書の記載に不備があったことを理由に、選挙の無効等を主張した。具体的には、当該届出書は要式行為として一定の記載が求められるものであるところ、一部の事項が未記入のまま提出されていた。しかし、投票当日、係官が立候補者本人の意思に基づき、当該不足事項を補充記入する措置を講じていた。
あてはめ
本件立候補届出書は、法令上一定の形式を要する要式行為である。しかし、本件において問題となった欠落事項は、投票当日に係官が立候補者本人の意思を確認した上で補充記入したものである。このように、本人の意思に基づく適切な補完がなされたのであれば、実質的な適法性は確保されており、手続的な不備は治癒されたと解するのが相当である。したがって、届出を無効とする理由はない。
結論
立候補届出書の瑕疵は治癒されており、当該届出は有効である。よって、本件選挙の効力に関する原判決の判断に違法はない。
実務上の射程
事件番号: 昭和27(オ)377 / 裁判年月日: 昭和27年10月31日 / 結論: 棄却
公務員が退職しないまま立候補の届をし、立候補届出期間内に退職の効果を生じた場合は、退職により候補者たる適格を有するに至つたときから、右立候補届の効力が生ずるものと解するのを相当とする。
行政手続上の要式行為における「形式の厳格性」と「実質的妥当性」の調整を示す。答案上は、申請や届出の軽微な形式不備が、本人の意思確認や行政庁の関与によって治癒され得るという論理を立てる際の根拠として活用できる。ただし、本判決は選挙という公益性の高い場面での判断である点に留意が必要である。
事件番号: 昭和32(オ)708 / 裁判年月日: 昭和32年10月29日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】選挙手続に法令違反がある場合であっても、それが選挙の結果に異動を及ぼすおそれがないときには、当該選挙は無効とはならない。投票箱の空虚確認漏れ等の手続上の瑕疵は、実質的に公正が担保されていれば選挙無効の原因を構成しない。 第1 事案の概要:村議会議員選挙において、複数の手続上の問題が指摘された。具体…
事件番号: 昭和36(オ)560 / 裁判年月日: 昭和36年10月13日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】投票箱の一部に施錠不能な破損があっても、内蓋の施錠や封印、保管状況等から不正混入の虞が否定される限り、選挙結果に影響を及ぼす事由には当たらない。また、同一筆跡と疑われる投票の存在のみでは、直ちに組織的な不正投票の事実を認定することはできない。 第1 事案の概要:村長選挙等の効力が争われた事案。投票…