公務員が退職しないまま立候補の届をし、立候補届出期間内に退職の効果を生じた場合は、退職により候補者たる適格を有するに至つたときから、右立候補届の効力が生ずるものと解するのを相当とする。
公務員が退職しないまま立候補の届出をし立候補届出期間内に退職した場合の右立候補届の効力
公職選挙法89条
判旨
公職選挙法89条により立候補の適格を有しない者がした届出は当初は違法であるが、届出期間内に適格を有するに至った場合には、その時から当該届出は効力を生ずる。
問題の所在(論点)
立候補届出の時点では立候補制限(公職選挙法89条)に抵触し適格を欠いていた者が、立候補届出期間中にその制限事由を解消した場合、当初の無効な届出が有効となり得るか。
規範
公職選挙法89条の規定により立候補適格を有しない者が立候補の届出をした場合、その届出は当初は違法である。しかし、当該候補者が立候補届出期間内に適格を有するに至った場合には、改めて届出をさせることは無用の手数であり必要性も乏しいため、適格を有するに至った時から、当初の立候補届出が効力を生ずると解するのが相当である。
重要事実
町長選挙において、町議会議員であったDが、立候補を制限されている公務員(公職選挙法89条)であるにもかかわらず、議員辞職することなく立候補の届出を行った。その後、Dは立候補届出期間内に町議会議長の許可を得て議員を辞職し、その証明書を同期間内に選挙長に提出して立候補適格を得た。この当初の届出の有効性が争われた。
あてはめ
Dは当初の届出時点では議員の職にあり、立候補の適格を有していなかった。しかし、Dは立候補届出期間内に議員を辞職したことで、当該期間内に立候補者としての適格を具備するに至っている。したがって、Dが議員を辞職し適格を取得した時点において、当初の違法な届出は有効な届出としての効力を生ずるものと評価される。
結論
Dの立候補は有効であり、当該届出を有効とした原判決は正当である。
実務上の射程
行政上の手続的瑕疵の治癒に関する判断を示したものといえる。立候補届出期間という法定の期間内であれば、後発的に適格を備えることで当初の瑕疵ある届出を有効化できるとする。答案上は、厳格な形式論よりも行政目的の合理性や無用な手続の省略を重視する論理として引用可能である。
事件番号: 昭和37(オ)697 / 裁判年月日: 昭和37年12月26日 / 結論: 棄却
一 証明書を提出することができない理由記載欄に「証明者なし」と記載した選挙人自身が作成した疎明書と題する書面を提出しただけでは、公職選挙法施行令第五二条第三項の疎明があつたとはいえない。 二 不在者の投票用封筒の表面および裏面またはそのいずれかに公職選挙法施行令第五六条第六〇条所定事項の記載のない投票は、受理すべきでな…
事件番号: 昭和31(オ)687 / 裁判年月日: 昭和31年10月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】選挙会における決定の効力は、開票の際に存在した事実上の投票状況を基礎として判断されるべきであり、事実認定に疑義がある場合には、証拠により確定された事実に従う。 第1 事案の概要:本件では、選挙会における決定の効力が争われた。具体的には、係争の投票4票が開票の際に存在したか否かが争点となり、上告人は…
事件番号: 昭和27(オ)247 / 裁判年月日: 昭和30年2月17日 / 結論: 破棄自判
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当選の効力に関する訴願裁決の要旨の告示が訴願人に対する裁決書交付前に行われた場合においても、訴願人が右裁決に対し訴を提起する場合の出訴期間は、右訴願人が裁決書の交付を受けた日から三〇日以内である。