判旨
売買契約における目的物の所有権移転時期は、原則として契約成立時であるが、当事者間に特約がある場合には、代金完済時等まで留保される。
問題の所在(論点)
売買契約の目的物が引き渡されている場合において、代金未払の状態のまま買主が破産した際、目的物の所有権がどの時点で移転するか。特に、引渡しがあっても所有権移転を留保する特約の有無とその効力が問題となる。
規範
売買契約における目的物の所有権は、原則として契約成立時に移転する(民法176条)。しかし、当事者間に所有権移転時期を代金完済時とする旨の明示または黙示の特約が認められる場合には、当該特約に従い、代金支払が完了するまで所有権は売主に留保される。
重要事実
B製本株式会社は、有限会社D鉄工所との間で研磨機の売買契約を締結し、商品の引渡しを受けた。しかし、B社は代金を支払わないまま休業状態に陥り、その後破産宣告を受けた。一方、被上告会社は、B社の破産宣告前にD鉄工所に対し研磨機の代金を支払い、目的物の引渡しを受けていた。
あてはめ
本件では、B社とD鉄工所との売買契約に際し、代金支払前には所有権が移転しない旨の特約が存在したと認定される。B社は研磨機の引渡しを受けたものの、代金を支払っていないため、特約に基づき所有権は依然として売主側に留保されていた。その後の事情(被上告人による代金支払と引渡し)を総合すると、B社の破産時点において所有権がB社に帰属していたとは認められず、被上告人に帰属していたと解するのが相当である。
結論
買主が代金を完済せず、かつ所有権移転時期に関する特約がある場合、目的物の引渡しを受けていても買主は所有権を取得しない。したがって、破産管財人は当該物件の所有権を主張できない。
実務上の射程
所有権留保特約の認定に関するリーディングケース。契約書上の明文がなくとも、取引の経緯や代金支払の状況から特約を推認し、破産財団への組み入れを否定する論法として活用できる。
事件番号: 昭和30(オ)6 / 裁判年月日: 昭和32年6月7日 / 結論: 破棄差戻
履行に代わる損害賠償額を時価により算定するにあたり、裁判所が債務の履行期および不履行の時期を確定せず、漫然、訴提起後のある時期における時価を基礎とし、結局、右算定の基準とされた時期が、当該債務不履行と如何なる関係にあるか判文上不明の場合は理由不備の違法があるというべきである。