一 株式会社に対し会社更生法三九条の規定により弁済禁止の保全処分が命じられたのちに、契約上の会社の債務の弁済期が到来しても、債権者は、会社の履行遅滞を理由として契約を解除することはできない。 二 買主たる株式会社に更生手続開始の申立の原因となるべき事実が生じたことを売買契約解除の事由とする旨の特約は、無効である。
一 株式会社に対し会社更生法三九条の規定により弁済禁止の保全処分が命じられたのちに契約上の会社の債務の弁済期が到来した場合とその履行遅滞を理由とする契約解除 二 買主たる株式会社に更生手続開始の申立の原因となるべき事実が生じたことを売買契約解除の事由とする旨の特約の効力
民法540条1項,民法541条,会社更生法1条,会社更生法39条
判旨
更生手続開始の申立により弁済禁止の保全処分が命じられた場合、その後の履行遅滞を理由とする契約解除は認められず、また開始申立自体を解除事由とする特約も会社更生法の趣旨に反し無効である。
問題の所在(論点)
1. 弁済禁止の保全処分後における履行遅滞を理由とする解除の可否。 2. 更生手続開始の申立を解除事由とする特約の有効性。
規範
1. 旧債務弁済禁止の保全処分が命じられた場合、会社は法律上の拘束を受けるため、その後の弁済期の到来について履行遅滞を理由とする契約解除はできない。 2. 会社更生手続開始の申立の原因となる事実が生じたことを解除事由とする特約(いわゆる倒産解除特約)は、事業の維持更生を図るという会社更生法の趣旨・目的を害するため、その効力を有しない。
重要事実
売主(上告人)は、機械を代金割賦払い・所有権留保の約定で買主(D社)に売却し引き渡した。契約には「更生手続開始の申立等の事実が生じたときは無催告で解除できる」との特約があった。D社は代金の一部を支払った後、自ら更生手続開始の申立を行い、裁判所は旧債務の弁済禁止を命ずる保全処分を下した。その後、代金支払のための手形が不渡りとなったため、売主は右特約に基づき契約解除を通知し、管財人(被上告人)に対し所有権留保に基づく取戻権を行使して機械の引渡を求めた。
あてはめ
1. 履行遅滞について:D社は保全処分により債務弁済を禁じられていた。この法律上の拘束がある以上、その後の不渡り(履行遅滞)を理由とする解除は認められない。 2. 特約の有効性について:本件特約は、会社更生手続の開始原因を解除事由とするものである。これは、利害関係人の調整を図りつつ事業の更生を目指す会社更生法の目的を阻害する。したがって、当該特約に基づく解除も効力を有しない。 3. 以上より、売主による解除は無効であり、取戻権行使の前提を欠く。
結論
本件売買契約の解除は認められず、所有権留保に基づく機械の引渡請求は棄却される。
実務上の射程
会社更生手続(現:更生手続)における倒産解除特約の効力を否定した重要判例である。民事再生手続においても同様の理が妥当すると解されるが、破産手続においては本判例の射程が及ぶかについて議論がある点に注意を要する。答案では「更生法の趣旨(事業の維持・更生)」との対比で論じるべきである。
事件番号: 昭和39(オ)718 / 裁判年月日: 昭和41年9月6日 / 結論: 棄却
限定種類債務の目的物が当事者の合意により特定し一時買主の保管下におかれた場合でも、売主において修理を加え完成品として引き渡すことを後日に留保したときは、いまだ売買目的物の引渡しを了したものとはいえず、債務不履行責任を生じうる。
事件番号: 昭和31(オ)773 / 裁判年月日: 昭和33年4月22日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】民法579条の要件を満たさない買戻しの特約であっても、公序良俗に反する等の事情がない限り、契約自由の原則に基づき有効である。また、事情変更の原則の適用には、当初の契約を維持することが信義則に著しく反するほどの重大な事情の変更が必要である。 第1 事案の概要:被上告人(売主)は、昭和20年4月19日…