判旨
裁判上の自白について、当事者が真意とは異なる表示を誤って行ったという特別の事情がある場合には、その取消しが認められる。
問題の所在(論点)
裁判上の自白において、真意と異なる表示を誤って行った場合、当該自白の取消しが認められるか。
規範
裁判上の自白が成立した場合、原則として撤回は許されないが、自白の内容が真実に反し、かつ、錯誤に基づきなされたことを証明した場合には、例外的にその取消しを認めるべきである。
重要事実
上告人は、被上告人に対し、売買および買戻し等の合意に基づき係争家屋の明渡しを請求した。第一審の第一回口頭弁論において、被上告人本人は、本来は第三者に対する関係でのみ効力を生じさせる趣旨で作成された書面(甲1、2号証)の成立を認める際、表示を誤って上告人が主張する事実の全部を認める旨の回答をしてしまった。
あてはめ
本件では、問題となった証書が第三者向けに作成されたものであり、被上告人本人もその趣旨で成立を認める意思であった。しかし、実際の口頭弁論ではその表示を誤り、上告人の主張事実を全面的に肯定する結果となった。このような事実関係の下では、自白の内容が真意に反し、かつ錯誤によってなされたものと評価されるため、自白の取消しを認めるのが相当である。
結論
自白の取消しを認めた原審の判断は妥当であり、上告を棄却する。
実務上の射程
本判決は、民事訴訟における自白の取消要件である「錯誤」の具体的認定を示したものである。答案上は、自白の撤回が制限される趣旨(不要証効・審判排除効)を前提としつつ、本件のような「表示の誤り」が錯誤にあたることを指摘する際に活用できる。
事件番号: 昭和36(オ)561 / 裁判年月日: 昭和38年10月24日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】裁判上の自白の取消しが認められるためには、自白が真実に反し、かつ、錯誤に基づいたものであることを要する。本件では、鑑定結果が自白した賃料額を下回るというだけでは、直ちに自白が真実に反し錯誤によるものとはいえないと判断された。 第1 事案の概要:上告人(被告)は、第一審において本件家屋の賃料相当額が…